極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
何をしていいかわからなかったから、せめて手の込んだ食事を作ろうと思った。ところが、両開きドアの大きな冷蔵庫には栄養ドリンクの小瓶が冷やされているだけで、食材が一切入っていなかった。CEOなら激務だろうから、料理をしている時間なんてないのだろう。でも、千秋くんの食生活が心配になる。
だから、今夜は栄養に気をつけたメニューにしようと思った。身だしなみを簡単に整えて、マンションから程近いスーパーに向かった。
徒歩3分のスーパーは、高級タワーマンションが立ち並ぶ土地柄か、取り扱われている食材の種類と値段に飛び上がった。だって、フレンチのフルコースが作れそうなラインナップだ。
ぐるりと店内を一周して、なるべくリーズナブルな食材を探した。昨日のうちに千秋くんから、当分の生活費としてとんでもない額の口座振込があったけれど、できるならそれは使いたくない。これ以上、千秋くんにみっともない姿は見せたくない。
――俺は優しいわけじゃない。紗夜香さんだから、何を差し置いても守りたかった。
千秋くんは私にそう言った。
私に対する、揺るぎのない愛の表明。
素直に受け止めれば簡単なのかもしれないと思うのに、私はどうしようもなく戸惑っている。
だって、千秋くんと私の時間は、もしかしたらあの頃のまま止まっているのかもしれない。
今の私の全部を知ったら――29歳にもなって何も持たない私をちゃんと知ったら、千秋くんは目を覚ますみたいに、私への愛が全部思い出だったと気づいてしまうのかもしれない。