極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
 ほんの少し重たい足取りでマンションに戻った。洗面台で手を洗ってから、ぴかぴかのキッチンに向かう。使用感のないキッチンだけれど、道具は一通り以上に揃っている。――よし、と気を取り直して調理に取り掛かった。

 買ってきたばかりの、じゃがいもを洗う。皮を剥く。大まかにカットする。トントントン、と包丁を動かす音がだんだん軽やかになってくる。一口大に切ったじゃがいもを水にさらすあいだに、次はにんじん。

 今夜のメニューはクリームシチュー。それと、ハムとアスパラのオムレツに、エビとブロッコリーのサラダ。

 クリームシチューには生姜の風味を効かせて、身体が温まるように。オムレツには隠し味として醤油を加えて、サラダには水切りしてちぎった豆腐を散らす。どれも洋風のメニューだけれど、和の味わいをさりげなく。

 栄養バランスを整えながら、ちゃんと満足感のある優しい味にしたつもりだ。
 千秋くんの食の好みを確認していなかったから、もしかしたら口に合わないかもしれないけれど。

 ――口に合わなかったら、申し訳ないな。

 洗い物をしながら少し不安になってきたところで、18時半を回った。
 ややあって玄関の方で物音がして――千秋くんが帰ってきた。
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