極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
翌日も、よく晴れた気持ちの良い天気だった。朝食に使った食器の片付けと、室内の簡単な掃除を済ませた私は、身支度を済ませてマンションを出た。
今日の服装は、シンプルなホワイトのトレーナーとベージュのチノパン。それに、ブラックのジャンパー。カフェでアルバイトをしていたときとほとんど同じ服だけれど、これがくたびれた格好だとはもう思わない。長年着ている服ではあるけれど、ちゃんと手入れしながら使っている。だから、清潔感だってちゃんとある。
透き通った光を含む、冬の風。凛とした冷たさを感じながら、背筋を伸ばして街を歩く。
そうして30分ほど歩いたところで、緑色の屋根が見えてきた。
前に散策していたとき、目が合って会釈をしてくれたご婦人――『みどりのやね』園長の朝比奈透子さん。
面接で話したときの印象通り、朝比奈さんはにこやかに私を迎えてくれた。まずは、簡単に施設内を案内してもらった。
一軒家を改装したという施設は、全体的にアットホームで温かみのある雰囲気だった。二階には広い図書室があった。覗いてみると、本を整理していた職員さんと目が合った。慌てて会釈をすると、彼からも丁寧な会釈が返ってきた。
子供たちは、授業が終わるのが早い低学年の子から、14時半を目安にやってくるという。私の仕事は、15時半から提供されるおやつの調理を補助すること。調理師の渡辺陽子さんは、私より10歳くらい年上の気さくな女性だ。渡辺さんとも、面接で顔を合わせている。
「緊張してる?」
渡辺さんが、大らかな笑顔で尋ねる。
「少し」
と、私は正直に答えた。
「カフェで働いてたんなら大丈夫よ。調理の知識も申し分なさそうだし」
言いながら、渡辺さんは私にエプロンを差し出した。
「これ、つけてね。その服なら大丈夫だと思うけど、もし着替えるなら更衣室はあっち」
「着替えは大丈夫です。エプロンだけ、つけますね」
どきどきしながらエプロンをつけて、背中で腰紐を結ぶ。よし、と心の中で勢いをつけて、腕まくりをして調理場に入る。
「これが月間のメニュー表で、今日はさつまいもの蒸しパンとヨーグルトサラダ」
「わかりました」
「じゃあ、宮野さんはフルーツのカットをお願い」
「はい!」
張り切った返事が、調理室内に大きく響いた。途端に恥ずかしくなったけれど、頼もしいわ、と渡辺さんは軽快に笑ってくれた。