極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
マンションに帰宅すると17時半を過ぎていたので、少しだけ休憩してから、夕食の準備に取り掛かる。
今日は、手早く作れる明太子のパスタとチキンと野菜のスープにした。パスタのソースとスープだけ作って、千秋くんが帰宅したらすぐに麺をゆでられるようにする。
千秋くんは、このところ以前よりも多忙にしている。何でも、会社全体で注力している南アメリカのエネルギーインフラ事業が、佳境に入ったという話だった。あと2ヶ月は多忙が続くという話で、深夜まで会社にいる日も増えたし、帰宅してもメールや電話のやりとりをしている。さらに、南アメリカはスペイン語を公用語とする国が多いから、合間にスペイン語の勉強もしている。こんなの、いつ倒れてもおかしくないと密かに心配をしている。
私も働き始めるのだから、無理をして食事を作らなくてもいいと千秋くんには言われている。それでも、千秋くんの生活を間近で見ていたら、せめて食事くらいちゃんと取ってほしいと思う。だから、なるべく食事を作るようにしたい。こんな考えは時代錯誤かもしれないけれど、私の役目が仮初でも『妻』であるのなら、私は千秋くんを支えたい。
そんなことを考える私の脳裏に、隼人の影がちらつく。愛のために一途に尽くして、何もかも失った私。もしかしたら、私はまた間違った選択をしているのかもしれない。
調理に使った食器を洗いながら、ぎゅっとくちびるを噛んだ。どんなふうに生きれば、私は、自分が納得できる私になるのだろう。
ぐるぐると考えたけれど、答えは出なかった。そうしている間に、千秋くんが帰宅した。