極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~

 食事を終えると、千秋くんはすぐに自室に下がった。海外の取引先とオンラインでミーティングがあるのだという。

 洗い物を済ませた私は、ソファに置いていたバッグから一冊の本を取り出した。

 今日、『みどりのやね』からの帰りに買ってきた本――調理師の資格勉強の入門書。

 今、私にできることはあまりないのかもしれない。それでも、私の料理が千秋くんを支えられているというのなら、もっと料理について学びたいと思う。

 ソファに腰掛けて、本をめくっていく。

 目次から始まり、まずは公衆衛生学の概要を読んでいると、ローテーブルに置いていたスマホがメッセージを受信した。
 本を置いてスマホを見て、思わずスマホを取り落としそうになった。

 メッセージは、別れてから一切連絡を取っていなかった隼人からのものだった。
 訝しみながらSNSをひらくと、

『久しぶり! 今何してんのー?』

 軽薄なメッセージに、眉根を寄せる。

 即座に連絡先をブロックして、スマホをローテーブルに置いた。気分が最悪になったので、お風呂に入って気持ちを切り替えることにした。

 自室で着替えを用意して、バスルームに向かう。
 途中、千秋くんの部屋の前を通った。

 閉められたドアの向こうで、千秋くんは今も働いている。

 仮初の妻の立場で――恋人でもない同居人の立場で、これ以上何も千秋くんを助けられないことが、もどかしく思った。
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