極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~

「今日のおやつは、にんじんのクッキーとミルクプリンですよー」

 にんじん、という言葉を聞いた途端に、亜弥ちゃんは表情を曇らせた。ああやっぱり、今日もダメかなと思ったところで、

「わあっ! かわいい!」

 別の子供たちから歓声が上がった。

「ハートだ!」

「こっちは、おほしさま!」

 次々に上がる子供たちの声に、亜弥ちゃんの表情がほんの少し変わる。逡巡めいた間合いののちに、亜弥ちゃんがこちらへやってきた。

「リボン……!」

 トレイに小分けされた様々なかたちのクッキーのうち、亜弥ちゃんが目を留めたのはリボン型。それこそが、私たちの狙いだった。可愛らしくアレンジされている亜弥ちゃんの髪には、いつもリボンのアクセサリーがつけられているから。

 今日は、ハーフツインテールに水色オーガンジーのリボン。ぎゅっと口を曲げて考え込む表情をした亜弥ちゃんが、おずおずと手を伸ばす。そうして、リボン型のクッキーが載ったトレイを取った。

 私と渡辺さんは、そっと目を見合わせて頷き合う。それぞれテーブルに着いた子供たちは、

「いただきます!」

 元気よく手を合わせて、クッキーとプリンを食べ始める。

 亜弥ちゃんはトレイを前にしたまましばらく悩んでいる様子だったけれど、やがて、クッキーを手に取った。そうして――ぎゅっと目を瞑って、ひとくちかじる。

「おいしい……」

 ぽつり、と亜弥ちゃんが呟いた。私はほっと表情を緩ませる。テーブルをひとつ挟んだ向こう側から、渡辺さんがぐっと親指を立てる。

< 40 / 77 >

この作品をシェア

pagetop