極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
帰り道に、マンションの近くのスーパーに寄った。せっかく見つけたリーズナブルなスーパーは、隼人に似た男性を見かけたことで、何となく行きづらくなっていた。
食材で重たくなったエコバッグを持って、マンションに帰宅する。玄関のドアをあけたところで、室内の明かりがついていることに気づいて驚いた。
千秋くんが、先に帰っている?
室内に上がって、廊下を進んでいく。
「ただいま……?」
リビングのドアをあけると、千秋くんがソファで眠っていた。足音をさせないようにして近づくと、座っていた体勢から崩れたのか、脚を床に下ろしたまま肘掛けを枕にして眠っている。全体的に顔色が悪く、力なく瞑られた目元には濃いめのクマがある。
――やっぱり、疲れてるんだな。
ソファの足元に荷物を置いて、自室に毛布を取りに行った。リビングに戻って、千秋くんの身体に毛布を掛ける。すると、
「……紗夜香さん……?」
千秋くんがうっすらと目をあけた。
「うん。ただいま」
「おかえりなさい……」
ゆるゆると上体を起こした千秋くんは、緩慢な動作で周囲を見回した。そうして何度がまばたきをすると、わずかに顔をしかめる。
「すみません、いつの間にか寝てました……。先に帰ったのに食事も作らず……」
「何言ってんの、それだけ疲れてるのに」
千秋くんの隣に座って、目線を合わせてたしなめた。だって、千秋くんは私のことばかり気に掛けすぎている。
「千秋くんはさ、無理をしないでって私に言ってくれるでしょ。私も、同じことを思ってるよ。千秋くんに無理をしないでほしい」
そう言ったら、千秋くんは面食らったような顔をした。私は彼の目を真っ直ぐに見つめたまま続けた。
「疲れてるなら、私を頼って。全部自分がやらなきゃって思わないで。疲れているのに、まだ頑張ろうとしないで」
言い切ると、千秋くんは面食らった顔のまま固まっていた。
ややあって緩やかにまばたきをすると、
「そっか、」
ひとりごちるように呟いて、口元から微かな息をこぼす。
「俺は、無理をしていたのかな」
何かを悟ったような声で、千秋くんはそう言った。