極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~
千秋くんが、私を抱きしめる腕をそっと緩めた。私たちはおそるおそる向かい合って、互いの瞳を見つめ合った。
冬の冷たさが指先から身体へ染みてゆく中、私はようやく口をひらいた。
「私は、千秋くんが積み重ねてきた大切なものに傷をつけてしまうかもしれない」
美しく磨かれた貴いものの、価値を危ぶませる唯一の傷。
それを何よりも恐れる私に、千秋くんは私を見つめたまま続けた。
「俺があなたを愛したとして、俺の何らかが損なわれるとは思いません」
彼の眼差しに、ためらいや迷いは一切なかった。
「だって俺は、俺の両親の愛が本物だと知っています」
その言葉を聞いた刹那――彼の覚悟を思い知る。
紗夜香さん、と千秋くんが私を呼ぶ。強い決意を宿した声で彼が続ける。
「俺は、あなたを愛した俺のまま、久遠グループの期待に応えます」
そして、と続ける彼の声が、私の心に真っ直ぐに届く。
「俺は俺個人としてだけでなく、久遠グループ後継者の久遠千秋としても、あなたに結婚を申し込みます」
――ああ、何て強い眼差しなんだろう。
千秋くんの瞳を見つめ返しながら、きっと、きみはやりとげるのだろうと思った。
私は、きみが誰よりも誠実なひとだと知っている。
だから、満月が夜に昇ったままでも――あなたの花嫁になれるのかもしれないと思った。