極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~

 それから1週間が経った。清典氏が倒れてからは、2週間だ。

 心臓の血栓が原因で倒れた清典氏の手術は、倒れた翌日には成功していた。本人の強い希望で、すでに退院済みでもある。

 それでも、千秋くんが変わらずに多忙にしているのは、清典氏の体調が思わしくないからだ。

 何でも、食事をまともに取れていないのだという。味がしない、と言って食事を拒むのだそうだ。手術で体力が落ちたところに、食事を取れない状態が続けば、体力はいつまで経っても回復しない。

「もともと、食事は社交の嗜みに過ぎないと思っているひとですから」

 ソファで身体を休めながら、千秋くんが言った。1時間後にはまた会社に行くことになっているので、ベッドで眠ることはできない。話し相手になってくださいと言われて、私は千秋くんの隣にいる。

 力なく目を瞑ったまま、千秋くんは続ける。

「俺も、紗夜香さんと暮らし始める前は似たようなものでしたし……」

 そう言われて、このマンションで暮らし始めた頃の、食材が一切入っていない冷蔵庫を思い出した。

「やっぱり……家族なんですね」

 千秋くんが、ひとりごちるように呟く。

「恨んでも恨みきれないと思っていたから。たとえあのひとが死んでも……きっと何も思わないと思ってた」

 千秋くんの声が、微かに揺らめく。千秋くんが疲弊しているのは、仕事で多忙なせいだけじゃない。

 沈黙に、やるせなさがにじんでいる。

 いつか、カフスボタンを届けに行った日。
 千秋くんに対して放たれた、厳格な声音を思い出す。

 ――おまえは久遠グループを継ぐ者だ。自覚を持ち、責任を果たせ。

 私は膝の上でぎゅっと手を握った。そうして、

「千秋くん、」

 彼に対して、ひとつの提案を行った。
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