極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~

 久遠家の敷地内にある、使用人さんたちが使う別棟に泊まらせてもらって、朝・昼・夜の食事を作った。栄養のバランスや食べやすさだけでなく、香味の強い食材を使うことを心がけた。

 清典氏は、「味がしない」と言って食事を拒んでいたのだという。もし、亜鉛不足などで味覚障害が起きているのなら、香りで味を補えると思った。人間が「味」と認識しているものは、実は「匂い」であることが多いのだという。たとえば、お祭りで提供されるかき氷のカラフルなシロップは、イチゴ味でも、メロン味でも、どれも同じ味だったりする。それぞれにイチゴやメロンの香料が添加されているから、匂いを感じて違う味だと認識するというのが種明かし。

 今日の澄まし汁には、柚子胡椒を加えた。炊き込みご飯にはミョウガの細切りを散らして、豆腐入りのつくねは大葉で挟んで砂糖醤油味にした。

 今日で、闘いを挑んでから5日が経った。私が作った料理は、メイド長の吉岡さんが清典氏の部屋まで運んでくれる。清典氏が、私の料理に対してどのような感想を持っているのかはわからない。それでも、――私はまだ、使い捨てられていない。

 6日目も、無事に捨てられないまま終わった。変わらず多忙にしている千秋くんに、『明日も頑張ろうね』とメッセージを入れた。
 そうして迎えた7日目。調理に取り掛かろうとしたところで、吉岡さんに声を掛けられた。
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