ながされて、絆されて、ふりむいて
「ありがとうね児玉さん、いや、花鈴ちゃん?」
「〜〜っ!!」
わたしを試すような笑みを浮かべる凪を睨みつけても「ぜんぜん怖くないよ?」と返されてしまう。
「お手洗い行ってくる!!」と逃げ足を発動させる。どれだけ凪と一緒にいても、たったこれだけでどきどきして、熱がきゅうっと集中してしまうこと、きっとバレてる。
逃亡先のトイレで一息ついて個室から出ようとすれば、耳に届いた生徒さんのかわいらしい声。
「あ〜〜リンノア、目の保養すぎた」
鍵を開ける手が、止まる。弊社の名前が会話の中心に鎮座していたから。
聴覚が最大級に強まる。"目の保養"というワードだけで、この話題の中心が凪であることがかんたんに想像できてしまう、から。
「わかる〜」
「茅野さん、かっこよすぎてヨダレ垂れかけてた」
「は?キモ」
「あんたこそ目ハートになってたわよ」
「あんなかっこいいひとと付き合いたいのは女なら誰だって思うよ〜。いいな児玉さん、仕事でもあんな近くにいられて」