ながされて、絆されて、ふりむいて



壁際で姿勢良く、わたしを待ってくれている凪が視界に映る。大学のなかで異質なオーラを放つのは、スーツ姿の社会人だからってだけじゃない。年は相応、けれど落ち着いていて目を惹く。


もうずっと、かっこよくてこまる。生まれてからずっと茅野凪が近くにいて、ほかのひとに恋なんてできるはずない。



「講義室の片付けはもうしておいたから。事務局の佐藤さんに挨拶と入館証を返却して帰ろうか」



……だからこそ、ふと、不安になる。わたしはいつまでもこの人を縛っていていいのだろうか。


もちろん凪だって、わたしの隣にいることを自ら望んでくれている。少なからず、わたしと意味は違えどすきでいてくれているはず。


……だけど。凪は、わたし以外と恋愛ができるひと。



「うん、かえろ。ありがとう」



……いや、大丈夫。凪がわたしの手を離さない限り、わたしからは離さない。





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