ながされて、絆されて、ふりむいて



「え、どうしたの?」


「どうしたのって、触れたくなって?」


「ね、でも、一応、勤務時間内だし大学も近いし、」



その右手に力は込めずとも、やっぱりわたしに振り払う勇気はない。わたしからは、離せない。


けれどあまりに大学が近すぎる。説明会に参加してくれた学生さんが見たら、リンノアのイメージはわたしたちの関係一色になってしまうかもしれない。それはノイズでしかなく、不要なもの。


あらぬ噂が回って、よからぬ芽を生み出すかもしれない。そこは避けたい。児玉花鈴として、人事部採用担当として。


不誠実が先行して入社したけれど、それなりに責任感は伴ってきたのだと思う。


それでもそんな責任感も、凪の前ではしゃぼん玉の泡のように消えゆく。




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