野いちご源氏物語 四八 早蕨(さわらび)
夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様も、姫君(ひめぎみ)匂宮(におうのみや)様を今月ご結婚させるおつもりだった。
この姫君は大臣(だいじん)様の六番目の姫君だから、(ろく)(きみ)とお呼びいたしましょう。
大臣様は、(みや)様が六の君とのご結婚の前に、いそいで他の女君(おんなぎみ)二条(にじょう)(いん)へお迎えになったことをご不快(ふかい)に思われている。
気の毒なことをしたと宮様は同情なさって、六の君へお手紙だけはときどきおあげになる。

六の君の裳着(もぎ)儀式(ぎしき)はすでに大がかりな準備が進められている。
宮様が他の女君とご結婚されていたことが分かったからといって、今さら延期(えんき)なんてできない。
そんなことをすれば世間に笑われてしまうから、予定どおりに行われた。

大臣様もお悩みになったのよ。
<匂宮様は六の君との結婚をぐずぐずと(こば)みつづけていらっしゃる。いっそのこと(かおる)(きみ)に差し上げようか。親戚同士の結婚はぱっとしないが、薫の君が他の家の婿(むこ)になるのは(くや)しい。長年宇治(うじ)大君(おおいぎみ)に恋をしていらっしゃったようだが、その人が亡くなって、心細そうに物思いなさっているとか。ちょうどよいではないか>

しかるべき仲介(ちゅうかい)役を立てて薫の君にお(うかが)いなさったけれど、薫の君はあっさりとお断りになった。
「命の(はかな)さを()()たりにしてまだ気分がふさいでおりますし、恋人を早死(はやじ)にさせた私は、結婚には向かない不吉(ふきつ)な人間のような気がするのです。とても結婚しようとは思えません」
もう全然(みゃく)がないから、大臣様はお(うら)みになる。
<宮様だけでなく薫の君まで何なのだ。こちらが丁重(ていちょう)にご提案したことを、いかにも嫌そうにお断りになるなんて>

大臣様にとって薫の君はお年の離れた弟でいらっしゃるけれど、お人柄(ひとがら)の立派な方なので、無理やり六の君を押しつけることはおできにならない。
< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop