野いちご源氏物語 四八 早蕨(さわらび)
(おんな)(ざか)りでお美しい中君(なかのきみ)だけれど、姉君(あねぎみ)匂宮(におうのみや)様のことでお苦しみになって、少しおやせになった。
優雅な上品さが増して、亡き大君(おおいぎみ)にそっくり。
おふたりが並んでいらっしゃると、それぞれ個性があって、とくに似ておられる感じはしなかったのよ。
でも今は、うっかりしていると「あれは大君かしら」と思ってしまうほど。

(かおる)(きみ)はまだ大君を恋しがって、『(たましい)が抜けていてもよい。お体だけでも残っていたら』とおっしゃっているそうですよ。どうせなら中君が薫の君とご結婚しておられたらよかったのに」
うまくいかない運命だと、女房(にょうぼう)たちは(くや)しがる。

薫の君の家来のなかに、山荘(さんそう)の若い女房を恋人にした人がいる。
今もときどき通ってきては、お互いの主人の情報交換をしているの。
薫の君は大君を失った悲しみから立ち直れず、新年なのに泣きはらしたお顔をなさっているみたい。
中君は女房からそれをお聞きになると、
<姉君のことを本当に愛していらっしゃったのだ>
と、ますます薫の君のご愛情深さに感動なさる。

匂宮様だって、もちろん中君を大切にお思いになっている。
以前お手紙でお知らせになったとおり、明石(あかし)中宮(ちゅうぐう)様のお許しをいただいて、中君を都へお迎えするご準備を進めていらっしゃる。
< 3 / 14 >

この作品をシェア

pagetop