月のうさぎと地上の雨男
「今度、高校まで迎えに行っていい?」


 家に着く直前、渡はふと口を開いた。


「いいよ! 嬉しい……!」

「その、それぞれの親に付き合うって報告して、問題がなさそうならね」

「……わかった」


 凪は一瞬ムッと口を閉じたが、すぐに微笑んで渡を見上げる。


「楽しみにしてる」

「うん、俺も」


 車がマンションのロータリーに入り、静かに止まった。

 猿渡がドアを開け、渡は最後に一度だけ凪の手を握って車から降りた。

 勢いで言ってしまった感はあった。

 でも、言ったことに嘘も後悔もない。

 渡は手のひらを強く握って家に向かった。
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