月のうさぎと地上の雨男
 凪の方も似たようなもので、母親はすんなり受け入れたと、その日のうちに渡に連絡が来た。


『よかったわねって言われた』

「そんなもんなんだね」

『前々から言ってたし、猿渡(さるわたり)蟹沢(かにさわ)も問題ないって口添えしてくれたしね。あとまあ……家柄的にも釣り合いが取れるからって』

「そっか。僕は分家の次男だけど、一応は雨水(うすい)の人間だからね。雨水だからっていいことは別になかったけど……家が役に立ったなら、よかった」

『渡くん、家柄について卑屈(ひくつ)だよね』

「雨男で嫌われてきたからさ」

『ふうん、じゃあその分私が甘やかすから腕広げて待っといて』

「……わかった」


 その後、渡は凪を高校に迎えに行く予定を立てた。

 凪の授業の終わる時間を確認して、渡が合わせられそうな日を決める。

 金曜日だったので、そのままデートに行くことにした。


『楽しみにしてる』

「うん、俺も」

『一週間空いちゃうのは寂しいけどニャインするね』

「俺もするよ」


 少し話してから電話を切った。

 渡は足元がふわふわするような気がして、ベッドに倒れ込んだ。


「ふふ」


 今まで渡に彼女がいたことはない。凪が初めての相手だ。

 かわいい女の子が自分と出かけるのを楽しみにしてくれているというのは、なかなか幸せな気分だった。


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