月のうさぎと地上の雨男
「私、お店で買い物ってほとんどしたことがないんだ」
車から降りた凪はぽつんと呟いた。
「そうなんだ?」
渡は凪と二度出かけているが、凪が買い物をしているところを見ていないと気づいた。
水族館では渡が買ったし、先日の遊園地でも財布を出していたのは蟹沢だった。
「修学旅行とか、そういうのはあるけど、家に外商が来るし、お友達もそんな感じでね」
「じゃあ、一緒に買い物しようか。何か欲しいものはある?」
「渡くんとお揃いで普段使いできるのがいいな」
「じゃあ、雑貨屋さんに行ってみようか」
渡は凪の手を取って歩き出した。
駐車場の出口で並んでフロアマップを見て、行き先を決める。
エレベーターで渡が振り返ると猿渡が微笑んで頷いた。
「私どものことは、どうかいないものとしてお楽しみください」
「ありがとうございます」
きっと、凪一人か、同性の友達との外出だとこうはいかないのだろうと渡は察する。
相手にもボディガードがついていて、のんびり買い物なんて雰囲気ではないに違いない。
そうなったら、その辺で買い物をしてみたいだなんて言えないだろう。
渡の伯母一家もそんな雰囲気だ。渡の従兄が同じ大学に通っているけれど、一緒に買い物や遊びに行ったりなんてしたことがない。
学年が二つ違うから授業でも会わなくて、たまにすれ違うときに軽く挨拶をするくらいだ。それだって、
「風間の腰巾着にでもなったのかよ」
なんて嫌みを言われることの方が多い。
渡はため息をついて従兄のことを頭から追い出す。
「凪」
「なあに?」
隣にできたばかりのかわいい彼女がいるのに、嫌なことを思い返すのはもったいない。
「凪は何色が好き?」
「うーん、ペールブルー」
「くすんだ水色?」
「もうちょっと濃い色かな。渡くんのイメージカラー」
「俺は黄色とワインレッドが好きだよ。この前の結婚式で凪がまとっていたドレスの色と、能力を使うときの凪の目の色」
二人は雑貨屋についた。
書きやすいシャーペンを探したり、匂い付きのボールペンを見たり、のんびり店内を散策する。
「渡くん、このペンケースかわいいねえ」
「シンプルで使いやすそうだ。これ、買おうかな」
「じゃあ私も買う。青にしよう」
「俺は黄色」
「イロチだ。嬉しいな」
車から降りた凪はぽつんと呟いた。
「そうなんだ?」
渡は凪と二度出かけているが、凪が買い物をしているところを見ていないと気づいた。
水族館では渡が買ったし、先日の遊園地でも財布を出していたのは蟹沢だった。
「修学旅行とか、そういうのはあるけど、家に外商が来るし、お友達もそんな感じでね」
「じゃあ、一緒に買い物しようか。何か欲しいものはある?」
「渡くんとお揃いで普段使いできるのがいいな」
「じゃあ、雑貨屋さんに行ってみようか」
渡は凪の手を取って歩き出した。
駐車場の出口で並んでフロアマップを見て、行き先を決める。
エレベーターで渡が振り返ると猿渡が微笑んで頷いた。
「私どものことは、どうかいないものとしてお楽しみください」
「ありがとうございます」
きっと、凪一人か、同性の友達との外出だとこうはいかないのだろうと渡は察する。
相手にもボディガードがついていて、のんびり買い物なんて雰囲気ではないに違いない。
そうなったら、その辺で買い物をしてみたいだなんて言えないだろう。
渡の伯母一家もそんな雰囲気だ。渡の従兄が同じ大学に通っているけれど、一緒に買い物や遊びに行ったりなんてしたことがない。
学年が二つ違うから授業でも会わなくて、たまにすれ違うときに軽く挨拶をするくらいだ。それだって、
「風間の腰巾着にでもなったのかよ」
なんて嫌みを言われることの方が多い。
渡はため息をついて従兄のことを頭から追い出す。
「凪」
「なあに?」
隣にできたばかりのかわいい彼女がいるのに、嫌なことを思い返すのはもったいない。
「凪は何色が好き?」
「うーん、ペールブルー」
「くすんだ水色?」
「もうちょっと濃い色かな。渡くんのイメージカラー」
「俺は黄色とワインレッドが好きだよ。この前の結婚式で凪がまとっていたドレスの色と、能力を使うときの凪の目の色」
二人は雑貨屋についた。
書きやすいシャーペンを探したり、匂い付きのボールペンを見たり、のんびり店内を散策する。
「渡くん、このペンケースかわいいねえ」
「シンプルで使いやすそうだ。これ、買おうかな」
「じゃあ私も買う。青にしよう」
「俺は黄色」
「イロチだ。嬉しいな」