月のうさぎと地上の雨男
猿渡が車を用意していたので、急いで乗り込んだ。
「ひー、怖かったあ」
「そだね……たしかに、迫力のある方だ……」
渡は怯える凪に笑いつつ、自分も息を整えた。
確かに怖かった。
伯母と同じくらい怖かった。
「ごめんなさい、弟と妹が失礼なことを言ってしまって。でもね、私はあなたが雨水の家の人だから好きなわけじゃない。それは分かって」
「……うん、ありがとう」
「私、ちょっと怒ってるからね。渡くんが悠と綾に『わかってる』って言ったの。あんな言いがかり、理解なんてしないでよ」
凪はまっすぐに渡を見ていた。
その顔が婦人とそっくりで、渡はやっと「ああ、この子は本当に怒ってるんだ」と気づいた。
「……凪がそう言ってくれるのは嬉しいよ。本当に嬉しい。でもね、二人が言ってたことは言いがかりじゃなくて事実だ。俺は分家でしかも次男だ。月詠のお姫様に釣り合う身分じゃない」
「渡くん」
「でも、だからって何もせずに君と離れる気はないよ。事実は事実。じゃあどうするか一緒に考えよう。俺だって凪のこと好きだからさ。身分が違うからって諦めたりしない」
渡が言い切ると、凪の瞳からまたぽろぽろと涙がこぼれた。
「うん、うん……! ありがとう渡くん」
車が渡の家のロータリーに止まる。
渡は凪の手の甲にそっと口付けた。
凪がはにかむのを確認して車から降りる。
「また連絡するね。冬休みは忙しくなっちゃうんだけど」
「うん、俺も連絡する。たぶん俺もそうだから、また学校が始まったら一緒に帰ったりデートしよう」
渡は手を振って、車を見送った。
「さて……親父に相談しなきゃ」
凪の弟と妹には反対されていること、月詠婦人には反対されていなさそうなこと。
きっと歌帆に言うと「兄妹の反対がなんですか!」とけしかけてきそうだから、まずは譲に言ったほうがいい。
渡は背筋を伸ばしてマンションに入った。
「ひー、怖かったあ」
「そだね……たしかに、迫力のある方だ……」
渡は怯える凪に笑いつつ、自分も息を整えた。
確かに怖かった。
伯母と同じくらい怖かった。
「ごめんなさい、弟と妹が失礼なことを言ってしまって。でもね、私はあなたが雨水の家の人だから好きなわけじゃない。それは分かって」
「……うん、ありがとう」
「私、ちょっと怒ってるからね。渡くんが悠と綾に『わかってる』って言ったの。あんな言いがかり、理解なんてしないでよ」
凪はまっすぐに渡を見ていた。
その顔が婦人とそっくりで、渡はやっと「ああ、この子は本当に怒ってるんだ」と気づいた。
「……凪がそう言ってくれるのは嬉しいよ。本当に嬉しい。でもね、二人が言ってたことは言いがかりじゃなくて事実だ。俺は分家でしかも次男だ。月詠のお姫様に釣り合う身分じゃない」
「渡くん」
「でも、だからって何もせずに君と離れる気はないよ。事実は事実。じゃあどうするか一緒に考えよう。俺だって凪のこと好きだからさ。身分が違うからって諦めたりしない」
渡が言い切ると、凪の瞳からまたぽろぽろと涙がこぼれた。
「うん、うん……! ありがとう渡くん」
車が渡の家のロータリーに止まる。
渡は凪の手の甲にそっと口付けた。
凪がはにかむのを確認して車から降りる。
「また連絡するね。冬休みは忙しくなっちゃうんだけど」
「うん、俺も連絡する。たぶん俺もそうだから、また学校が始まったら一緒に帰ったりデートしよう」
渡は手を振って、車を見送った。
「さて……親父に相談しなきゃ」
凪の弟と妹には反対されていること、月詠婦人には反対されていなさそうなこと。
きっと歌帆に言うと「兄妹の反対がなんですか!」とけしかけてきそうだから、まずは譲に言ったほうがいい。
渡は背筋を伸ばしてマンションに入った。