月のうさぎと地上の雨男

13.家を巻き込まざるを得ないのは、分かっていた

 年末年始、(わたる)と凪はそれぞれ忙しかった。


 渡は父の(ゆずる)と各所に挨拶に行ったり、仕事を手伝ったりと大忙しだった。

 それも兄が出て行ったせいだと、家にいない兄を呪いながら走り回った。

 凪も学校の期末試験や挨拶回りで忙しくしていた。

 互いに政治家のパーティで顔を合わせることはあったが、人前で気安く会話はできない。

 親の目が光っていて、こっそり二人きりになることもできず、形式的な挨拶を交わすのが精々で、そういう日の晩には凪から泣き言の電話がかかってくるのが常だった。



(ゆう)(あや)は謹慎中なんだよ』


 渡が凪の家に行った後、最初にパーティで顔を合わせた日の夜に、凪は電話でそう言った。


『お客様にあんな失礼な態度を取る子供を人前には出せないからって、ママが怒ってね。だから渡くんは安心して出てきてね』

「う、うん……。あの凪のお母さんは俺のこと何か言ってた?」

『礼儀正しくてきちんとした人って褒めてたよ。持ってきてくれたお菓子、ママが好きなのを用意してくれたんでしょ』


 渡は胸をなで下ろした。

 用意した菓子折は譲が伯母に確認してくれて、凪の言うとおり月詠(つくよみ)婦人が好むものを選んだから、間違っていなくてホッとした。


< 51 / 91 >

この作品をシェア

pagetop