月のうさぎと地上の雨男
 腕の中で微笑む凪を渡はいつもより強く抱きしめた。


「凪、久しぶり。一昨日会ったでしょう?」

「一日空いたら久しぶりなの!!」


 ぎゅうぎゅうとしがみついて、凪は頬を膨らませた。

 渡も凪の髪を梳いて、息をつく。

 一日の緊張がほぐれるようだった。

 このまま横になれたらどれだけ幸せだろうと、思わず想像してしまう。

 ……やましい意味ではなく。


「凪、帰ろうか」

「うん。ねえ、また明日は迎えに来られる?」

「大丈夫だよ。久しぶりに学校に来たら俺も疲れたし、凪に会いたいから」

「嬉しい。楽しみにしてるね」


 凪がシートベルトを締める。車は静かに走り出した。

 二人が久しぶりの登校の様子を話している間に、渡の家に着いた。


「渡くん、また明日」

「うん、また明日」


 凪はそう言いながらも、渡の手を離さなかった。


「凪?」

「離したくない」

「俺も離れたくないよ。でも、あまり遅いとご家族が心配するだろう?」

「……うん」


 凪の手がしぶしぶ離れていく。

 離れきる直前、渡は指先を掴んで唇を寄せた。


「また明日」

「渡くん、それ、余計に離れられなくなるから!」


 照れた顔で怒る凪に手を振って、渡は車から降りた。

 手を振って車を見送り、渡も自宅へ向かった。

 週末、凪とどこかへ出かけようか。

 渡はスマホを取り出し、よさそうな場所を探す。
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