月のうさぎと地上の雨男

28.憤る姉と宥める弟と

 (わたる)が車に乗り込むと、(ゆずる)が頷き、運転席の滝草(たきくさ)がエンジンをかけた。

 何度かワイパーが往復するうちに、徐々に雨が弱まっていく。


「俺はこっちの滝草が好きだな」

「なんだいきなり」


 吹き出した譲に、渡は本家の滝草のことを話した。

 見合いの部屋に入るのを止められたことと、先ほど謝罪されたことだ。


「どっちも滝草の仕事だけどさ。ごめん、なんでもない」

「渡様に好いていただけるのはありがたく思います。ですが」

「わかってる。八つ当たりしただけだ」


 渡が顔をそむけると、譲が笑った。


「凪ちゃんは?」

「ちゃんと帰したよ」

「当たり前だろうが」

「機嫌は悪かったけど、ゴールデンウィーク明けに高校に迎えに行くことでご納得いただいた」

「そうか」


 譲は安心したように息を吐いた。


「わかってると思うが、本家に行くと、頭領に叱られる」

「うん」

「まあ、そこまでお叱りではないと思うが、姉貴も頭領として一言言わないわけにはいかないからな」

「うん。ご迷惑おかけしました」

「わかっていればいい。まったく、(とおる)(しずく)まで巻き込んで……いや、発案は透か?」

「どっちかっていうと宗輔(そうすけ)

風間(かざま)……。まあ、仕方ない。(あや)様も噛んでるんだろ」


 どうやら、すべて筒抜けらしい。


 渡と透はそれを見越して、家でほとんど隠さずに作戦会議をしていたため、きちんと伝わっていて良かったと安心した。

 直談判すれば「大人で対応するから」と受け流されるに違いないと、透と渡、雫はわかっていた。

 だからこそ、普段は口を挟まないが、きちんと聞き耳を立てている歌帆(かほ)蛙前(かわずまえ)に伝わるよう、家で作戦会議をした。

 その程度のことは、譲と美佳(みか)にはきっとお見通しなのだろう。


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