総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
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大浴場から上がると、体の芯まで温まっていて、少しだけ頭がぼうっとしていた。
「こちらへどうぞ」
さっきのメイドさんに個室の脱衣スペースに案内され、
椅子に座ると、後ろからそっとタオルが外される。
「…そういえば、今更ですけど私名乗ってなかったですよね! 鳴瀬 桜と申します。気軽に下の名前で呼んでください」
鏡越しに目が合い、にこっと微笑まれる。
「……あの、桜さん」
「どうしましたか?」
「私、ただの……叶兎くんの彼女、だし。ここまで丁寧にしてもらわなくても大丈夫なので…」
私まだ何も貢献してないのに、みんなすごく色々してくれて申し訳ない。
そう言うと、背後で一瞬、手が止まった。
「——何言ってるんですか!?」
思った以上に勢いのある声に、思わず肩がびくっと跳ねる。
「胡桃様は“ただの彼氏”じゃありません」
その言い切りに、心臓が一拍遅れて鳴った。
次の瞬間、ドライヤーのスイッチが入り、温かい風が首筋を撫でる。
「叶兎様の——“奥様になられる方”です」
言葉の意味が追いつかなくて、思考が一瞬フリーズする。