総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
それから店主さんに案内されて、私たちは店の奥にあるテラス席へと向かった。
外といっても、通りから少し奥まった場所で、木の柵と蔦に囲まれている。
陽の光が柔らかく差し込んで、風が気持ちいい。
「俺のお気に入りの席」
叶兎くんがそう言って、椅子を引いてくれる。
「ありがと」
腰を下ろすと、木のテーブル越しに視線が合って、なんだかそれだけで落ち着いた。
すぐに、湯気の立つカップが運ばれてくる。
ほのかに甘い香り。
「……この味、変わってない」
叶兎くんが一口飲んで、懐かしそうに目を細めた。
「……おいしい」
この街の空気みたいに、あたたかくて、ほっとする味。
──そのとき。
叶兎くんのポケットが、小さく震えた。
「あ、ごめん」
そう言って端末を取り出した叶兎くんは、画面を確認した瞬間ほんの少しだけ眉を寄せた。
「時雨からだ。すぐ戻るからちょっと待ってて」
「うん、わかった!」
そう言って微笑むと、叶兎くんは一度、私の頭に軽く手を置いてから立ち上がった。
時雨くん…多分、仕事の連絡だろう。