総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
男の人が振り返るより先に、私の視界に見慣れた影が入る。
「……え?」
立っていたのは、黒いロングコートの青年。
落ち着いた目つきで、感情の読めない表情。
その顔を見た瞬間、心臓が跳ねた。
「………朔!?」
名前を呼ぶと、彼は一瞬だけ微笑んだ。
「久しぶり」
その声を聞いた瞬間、張り詰めていたものが少しだけ緩む。
ナンパしていた男の人が、怪訝そうに眉を寄せた。
「知り合い?」
「そう」
朔くんは一歩前に出て、私と男の人の間に立つ。
距離は近くない。
でも、それだけで空気が変わった。
「この子、俺の”大事な”幼馴染。困ってるじゃん」
淡々としているのに、有無を言わせない声。
「悪いけど、どっか行って」
男の人は一瞬何か言いかけて、でも朔の視線に気圧されたみたいに舌打ちして背を向けた。
「……チッ」
足音が遠ざかっていくのを確認してから、朔は私を見た。