総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



前は無効化できる能力と、できない能力があった。


無効化できるのは基本的に、人に直接作用するものだけ。

環境や空間に影響する力は私の無効化では届かなかった。


正直、基準は曖昧で。
できないことの方が多かった。


……でも。

半年経った今は、違う。


あの半年の間にも、無効化の力が必要とされる場面は思っていた以上に多かった。


そのたびに、協力して。
試して。
失敗して。
感覚を掴んでいった。


──今、触れるのは、もっと深いところ。


深呼吸してからもう一度前を見て、男の能力の“流れ”を感じ取る。

ぐちゃぐちゃに絡まった糸みたいなそれを、
一本一本、ほどくイメージ。



「っ、……」



指輪が、淡く光る。


次の瞬間。

男が喉の奥から呻きを漏らした。

黒い靄がびくりと揺れて、ぴたりと動きを止める。


完全に消えたわけじゃないけど、暴走していた力だけが確実に鈍っている。


その瞬間、叶兎くんが男の懐に踏み込み、腕を取り体勢を崩す。

抵抗しようとした男の動きが、明らかに鈍い。



「やめろ……!」

「終わりだ」



叶兎くんの声は、静かだった。


手首に素早く拘束具が装着され、地面に押さえつけられた男の体から力が抜けていく。

それを確認してから、私はそっと能力を解除した。



周囲が、一瞬、静まり返る。



「……え?」

「もう、終わったの?」

「え、あれって、赤羽様だよね……?」



そして、ざわ、と一気に声が溢れる。

安堵と驚きが混じった視線が、私たちに集まっていた。




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