総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
♢好きには抗えない
事件が一段落して特殊警備隊に引き継ぎを終え、また2人で街を歩いていた。
夕方の空は、ゆっくりとオレンジ色に染まり始めている。
私がぼんやり余韻に浸っていると、叶兎くんが心配そうに覗きこんできた。
「……胡桃、疲れてない?」
「大丈夫だよ。叶兎くんは?」
「俺も平気」
そう言って、ふわっと笑う。
「このあとさ。」
叶兎くんは一瞬、言葉を探すように視線を逸らしてから。
「実家、寄ってもいい?」
……実家。
叶兎くんの、住んでいた家。
「で、でも私、今何も用意してない…!」
好きな人の実家に行くって、普通は手土産とか、ちゃんとした格好とか……
そもそも心の準備が必要なやつじゃない!?
急すぎるのでは…!
「別に何もなくて平気だよ。ウチの母さん、胡桃のこと連れてきて欲しいってずっと言ってたし」
私の慌てようを見て、叶兎くんは少し困ったように笑う。
「……なら、お邪魔してもいいですか?」
そう言うと、叶兎くんは一瞬だけ目を見開いて、それから少し照れたように笑った。
「……うん。来て欲しい」
それだけで、心臓がまたうるさくなる。
街を抜けて、少し静かな住宅街へ。
大通りの賑やかさが遠ざかるにつれて、周囲の音が柔らかくなっていく。