箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 また少し月日は流れ、私もようやく環境や仕事にも慣れてきた頃。任せてもらえることが増えたり、新しく覚えることも増えた。最初に習ったことを失敗せず行えたり、何なら手を抜けたりもできるようになった頃だ。

 新プロジェクトの件で、社外に出向く機会があり私も玄野さんの付き添いをしつつ現場を学ぶことになった。

「次バス乗るよ」

「え」

 思わずこぼれた声に玄野さんは小首を傾げる。

「あ、違います……その。バス……乗ったことなくて」

「へぇ? そうなの?」

 普段は基本送り迎え、ハイヤーに乗ることはあっても公共交通機関を使うことは滅多にない。バスでも路面バスは恥ずかしながら初めてだった。 
 
「乗り物酔いとかない? タクシーにしようか?」

「いえ! バス乗ってみたい!」

 子供みたいに声を上げたら笑われてしまった。それでもその素直な言葉に玄野さんは当然馬鹿にしたりしない。バスを楽しみにする私の気持ちを汲んでくれた。

 そこまで混んでいないバスだが座るまではできない状況。二人並んで景色や車内をキョロキョロと見渡す。

「危ないからしっかり持ってよ。バスは急に揺れたりするから」

「はい」

 それにも素直にうなずくとクスクス笑われるだけ。それに少し恥ずかしい気持ちはあるけれど、バスへの興味が勝っていた。

「5個目で降りるよ」

 ――5個……。
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