箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 5個目、そう言われて路面地図を眺めて駅名を確認していた。

 たくさんのバスが街中を走っているんだな、こんなに路線があるんだ……そんなことをぼんやり思いつつ見つめていたら車内に響くブザー音に身体がビクリと跳ねた。

 目の前のボタンがちょうど赤く点滅して何事かと思う。ジッとそのボタンを見つめていたら横で噴き出される。

「本当に初めて乗るの?」

「……はい」

 23歳にもなって路面バス初体験です、情けないがやはり興味が勝つ。

「これなんですか?」

「降りる時そのブザーを押すの」

「降りる時?」

「バスは各駅停まるわけじゃない。降りる人がいなかったらそのまま通過。降りる人がいなくてもバス停に人が待っていたら乗せる」

「へぇ……電車とは違うのですね」

「だから、降りたいときは意思表示しないと。その駅に誰も降りる人がいなかったら降ろしてもらえないよ?」

「そうなんですか!」

 派手に驚いたら結局噴き出されて。でも本当に知らなかったのだ。だから驚いてしまった。

「お、押していいですか?」

「もちろん」

 クツクツと笑いながらも私のやりたい気持ちを優先してくれる玄野さん。やっぱり優しい……そんなことを思いながら下車駅を今か今かと待ちわびている。降りるひとつ前の駅を発車して次の駅名がアナウンスされたのを確認したら押そう……! そう思って構えていた時だった。

 ブーッ……と軽快に響くブザー音。私の指先はブザーを押す前に固まってしまった。
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