箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 目的の仕事を終えて今日はこのまま直帰……なのだが。時間は定時をしっかり過ぎてもう19時前になろうとしている。

「お疲れ様、遅くなったなぁ」

「でも有意義な時間でした。とても勉強になりましたし……」

 受付でパスカードを返却して玄関を出たときに玄野さんが言う。

「腹空かない?」

 ――え?

「なんか食って帰る?」

「え?」

 それは……えっと……そう心の中でぐるぐると思うものの声にならない。それを察してくれるように玄野さんはクスッと笑う。

「腹減った。予定ないなら一緒に飯食って帰ろうよ」
 
 まさかのお誘いにまた胸が跳ねた。

 午後からずっと玄野さんと一緒にいる……そんな思いを抱えながらドキドキ横に並んで歩く。仕事の延長、そんなことはわかるけれど男の人と夜の街、肩を並べて歩くのは初めて。ましてそれが好きな人、なんて。

 ――どうしよう。ドキドキする。

 胸のドキドキがずっと鳴りやまない。

「巳波さん」

「はい!」

「だから好き?」

「え!」

 ――すす、好きとは? 私、なにか変なことを口走ってしまった!? 玄野さんを好きなんてバレるわけにはいかないのに!

 無意識にそんな思いをこぼしていたのだろうかと慌てたら、玄野さんは窺うように尋ねてくる。

「普段はどんな店とか行く? イタリアンとか好き?」

「す、き……ですけど……」

 なんだ、好きなジャンルを問われていただけだとそこでようやく気づく。
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