箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 ひとり暴走して馬鹿みたいだ、そう思いつつも普段行くお店……それを思い浮かべてみるのだけれど。

 ――イタリアンは好きだけど……。

「けど? ほかに行きたいところとか食いたいものある?」

「えっと……」

 言い淀む私を静かに待ってくれる玄野さん。待たせる私の方が気まずくなってくる。それでもなかなか思うことを言葉にできない。そんな私を見かねてか、優しい声で問いかけられる。

「なに? 言っていいよ?」

「え?」

「仕事じゃないんだし。そんな気負うことないだろ。食いたいもん言うだけだよ、言ってみ?」

「……」

「あ、行きたくないってこと?」

「違う!」

 予想外の言葉を投げられて大きな声を出してしまって自分の口を両手で塞ぐ。こんな大きな声、初めて出した。まずはそれに自分が驚いて。そしてそんなひとり慌てる私をやっぱり玄野さんは笑うのだ。

「あの……ち、違います。行きたくないとか、そんなんじゃないです。そうじゃなくって……その」

「……うん」

「行って、みたいところ……あります」

「うん。どこ?」

 少しだけ前屈みになって、私に近づく玄野さん。サラッと綺麗な前髪が揺れて、その奥にある瞳と目が合った。その瞳に見つめられたらなにかの魔法にかかったようだ。ときめいて、胸がきゅんっとする。ああ、やっぱり私は玄野さんに恋をしている、それを実感してしまうのだ。

「……ラーメン屋さん」

「え?」

「ラーメン屋さんに行ってみたいです」

 私の告げる行先に、玄野さんは見つめてくる瞳を大きく見開いて眉をひそめていた。
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