箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 目の前で行われる、湯切りのパフォーマンス。
 大きな寸胴から立ち昇る、濃密な白い湯気たち。隣に座る男性たちが豪快に麺を啜っている。そして周りの人たちにチラチラ見られるのはやはり私が場違いなのだろう。少し委縮すると玄野さんが笑った。

「多分、緊張してんのは周りだと思うよ?」

「え?」

「可愛い女の子が、男ばっかのラーメン屋にいるんだもんな? 戦場にドレス姿のお姫様が来たらみんな驚くだろ? そんな感じだよ」

「ここは戦場なんですか?」

 思わず聞き返したら「ははっ」と声を上げて笑われてしまった。

「引っかかって欲しいのは後半の方なんだけどね」

 ――え?

「男はさ、可愛い子が近くにいるだけでドキドキしちゃうもんなんだよ」

「……っ!」
 
 「可愛い子」そんな言葉を鵜呑みにするなと言い聞かせるものの、ドキドキしてしまうのは許してほしい。あまりにストレートなその言葉に、頭の中が真っ白になってしまう。

 今まで聞いてきた「可愛い」とは比較にならない。玄野さんの言葉は、ダイレクトに私の心に染み込んでくるのだから。
 
「く、玄野さんも……ドキドキ、されるんですか?」
 
 勇気を振り絞って聞き返すと、少しだけ視線を泳がせつつ、手に持った割り箸を指先で弄んだ。
 
「……そりゃね。男だもん」

 そう微笑む顔が妖艶で色っぽい。
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