箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 すべてが終わった夜。

 自分の部屋でひとりになったとき、胸の奥に小さな灯火のようにチリチリと焼かれる痛さとでも言おうか。消えない火傷の痕のように、胸の奥に残る痛さに気づいてしまった。

 ――私は、ちゃんと柊也さんの妻になれているのだろうか。
 
 夫婦として、同じ温度で同じ未来を見ているのだろうか。籍は入れて、こうして式も挙げた。
 
 でも――。

 お風呂上がり、濡れた髪をドライヤーで乾かしてフワッと篭る熱を払うように髪の毛をかきあげた。ハラリと落ちてきた髪の毛、その毛先を指先でいじりながら小さなため息をこぼす。

「はぁ……」
 
 ここにある気持ちは確かに幸せなのに、満たされないもの。それに名前をつけるなら……寂しさかもしれない。

 鏡に映る自分はもう化粧も取れて、華やかにメイクされた昼間の自分が嘘みたいに子供っぽい。

「こんなだから……だめなのかな」

 でも柊也さんは言ってくれた。
 一緒にいると、未来を誓ってくれたのだ。勇気を振り絞って柊也さんの部屋の扉を叩こうと意を決した時だった。私の部屋の扉が叩かれたのは。

「……は、はい」

「佳乃? 入っていい?」

 まさか、柊也さんが来てくれると思わなくてドキリとする。

「は、はい!」

 扉に向かって駆け出したら待てないように扉が開けられてしまった。

「え……」

 部屋にやってきた柊也さんはバスタオルを頭から被りバスローブ姿で。まさに風呂上がり! そんな感じのスタイルで思わず驚きの声がこぼれた。

「あ、あの……」

「うん?」

 カチャ……と、扉が閉められたらまだ濡れた髪をくしゃくしゃとタオルドライする。軽く着崩されたバスローブは胸元が無造作に露になり無駄に色気を放つから視線に困った。

「疲れた?」

「……え?」

 目の前の柊也さんに戸惑って間抜けな変な声色になった。

「結婚式、疲れた? 大丈夫?」

「は、はい……大、丈夫」

「そっか、良かった」

 そう言ったらいきなりギュッと引き寄せられて抱きしめられる。

「……っ!」

「佳乃、すごく綺麗だった。ドレスも白無垢も……どっちも可愛かったよ」

「あり、ありがと……」

 チュッとこめかみにキスをされて驚いていたらいきなり膝裏に腕が差し込まれて身体が宙に浮いた。

「きゃあ!」
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