『君のためを思って』と婚約者に言われ続けたので『自分のため』に生きることにしました【短編】

「そうそう――」

 シャルロッテは()婚約者をまっすぐに見る。
 うっすらと笑みを浮かべた姿は、ハインリヒに対する尊敬や慈しみの念など少しも宿っていなかった。

「公爵令息様は、よくわたくしに『君のためを思って』とおっしゃっていましたね? お望みの通り、わたくしは『わたくしのため』に生きることにしましたの。そうしたら、灰色だった世界が美しく色付きましたわ。感謝申し上げます」

「えっ……」

 もはや頭が真っ白になった彼は、二の句が継げない。

「おいおい、シャーリー。少しは私のためを思ってくれても良いんじゃないか?」

「ふふっ。もちろんエド様のためも思って生きていますわよ?」

「それは嬉しいことだ。ま、私は自分のために努力し続けている君が好きだけどね。――さ、そろそろ行こうか。今日は私たちの婚約を発表をする輝かしい日だからな」

「やっと公表できるのですね。嬉しい……!」

 エドゥアルトとシャルロッテは楽しそうに会話しながら、ハインリヒの前を去っていく。
 二人の視界の中には、公爵令息の姿など少しも映っていなかった。




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