Bella Notte
―――― 楓が、また男に絡まれている。
 そう言うオレも、楓の事は言えない。

 モデルで顔が知れ渡ってしまってからと言うもの、こういう地元の集まりでさえオフにはならない。

 デビューする前に、覚悟はしたはずだけれど、こういう時につい苛立ってしまう。

 いつだって目の前の楓へたどり着けない時だ。 


 あの社長との出会いのきっかけだって、急に海外ロケが入って行けなくなったと俺の連絡が遅くなってしまったから。
 レストランで1人待たせてしまったから。

 恩人の頼みじゃなかったら仕事を断って楓の側へ行った。
 あの日、オレは本当は楓に告白するつもりだった。

 誕生日だからと本人には言い訳をして、あの有名三つ星レストランを予約して、柄にもなく楓の好きな大輪の芍薬の大きな花束を手配して。

 レストランへ連絡して、今夜は、行けなくなったので楓に贈るはずだったバースデーケーキと花束を彼女へ渡してくれと連絡した。

 飛行機の搭乗口でメッセージアプリに、芍薬の花束とそれに負けない相変わらず美しく、嬉しそうな笑顔の画像が送られてきて。

 絶対に、今度こそと心に決めながら、一週間後帰国してすぐ、仕切り直しと電話をしたら、ヤツとお付き合いすることになったと。

 しばらくは、ショックで立ち直る事ができなくて、楓の連絡を避けていた。

 とりあえず、新しい男がどんな奴か知ろうとするまでに回復するのにしばらくかかってしまい。

 仕事の移動中にWEBニュースを何気なく流し読みしていれば、ヤツの顔と華麗なる経歴が嫌でも目について。

 周囲の評判もすごく良くて。最近まで女遊びが酷かったけれど、やっと本命の彼女と出会って、それも治まったと聞いた時には、眩暈がした。

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