Bella Notte
少し冷たい潮風が心地いい。
さっきまでの気持ちの昂ぶりが寄る波の音にさらわれて、すこし和らぐのを感じた。
シースルーの手摺りへ寄りかかり、ふと海辺へ目をやる。
楓が1人で歩いているのが目に入り、こんなに離れてもすぐに分かってしまうのが自分でもおかしくなる。
自然と体はバルコニーの外階段を降りて、楓の元へ向かう。
靴に砂が入る感触が嫌で、裸足になって砂を踏みしめていき、彼女に静かに近づいていけば声が風に乗ってかすかに聞こえてくる。
「お父さん、お母さん。今日ね、久しぶりに帰って来られて凄くホッとできたよ。いつも見守ってくれてありがとう」
楓が座っている後ろへだんだんと近づくにつれて、気配を消して脅かしてやろうといたずら心が芽生えて来た所で。
完全にタイミングを見失ってしまいそのまま盗み聞きになってしまう。
「それとね、この前の彼。立派な婚約者がいて。もう別れちゃった」
楓の華奢な背中が丸まり、一段と頼りなく見える。
……知っていたんだ。
身体を震わす程のどす黒い怒りと、本当に別れたのだという事実への喜びで胸の中が八切れそうだ。
泣いてはいないようだけど、楓は強がりだ。
今は何も言わず、いつものようにそっと側に……そこまで考えていたのに。
さっきまでの気持ちの昂ぶりが寄る波の音にさらわれて、すこし和らぐのを感じた。
シースルーの手摺りへ寄りかかり、ふと海辺へ目をやる。
楓が1人で歩いているのが目に入り、こんなに離れてもすぐに分かってしまうのが自分でもおかしくなる。
自然と体はバルコニーの外階段を降りて、楓の元へ向かう。
靴に砂が入る感触が嫌で、裸足になって砂を踏みしめていき、彼女に静かに近づいていけば声が風に乗ってかすかに聞こえてくる。
「お父さん、お母さん。今日ね、久しぶりに帰って来られて凄くホッとできたよ。いつも見守ってくれてありがとう」
楓が座っている後ろへだんだんと近づくにつれて、気配を消して脅かしてやろうといたずら心が芽生えて来た所で。
完全にタイミングを見失ってしまいそのまま盗み聞きになってしまう。
「それとね、この前の彼。立派な婚約者がいて。もう別れちゃった」
楓の華奢な背中が丸まり、一段と頼りなく見える。
……知っていたんだ。
身体を震わす程のどす黒い怒りと、本当に別れたのだという事実への喜びで胸の中が八切れそうだ。
泣いてはいないようだけど、楓は強がりだ。
今は何も言わず、いつものようにそっと側に……そこまで考えていたのに。