Bella Notte
「あの男がまだ好きなの?」

 その距離感を無視して覗き込むように楓の視線を捉えて、こちらの聞きたい事を投げかける。
 ゆるゆると首を横に振る。

「ううん、それよりも知らなかったとはいえ、婚約者さんに悪い事をしたなって」

 楓らしい真面目過ぎる答え。

「楓は悪くない、気にするなってオレや長谷川が言ってもきっと気にするよな」

 そう言って笑えば、楓が泣きそうな顔で頷く。

 たまらなくなって、楓を掻き抱いて、きつく抱きしめる。
 大丈夫だって傍にいるからってそう気持ちを込めて。

 顔が見たくなってそっと腕を緩めて、顎に手をやり、互いの視線を絡ませ、触れそうな距離で溢れる思いを瞳に滲ませ見つめた。
 
 楓は月光の下でも分かるくらい赤くなって、瞳が潤んでる。

「好きだ」

 囁く様に伝えると、楓の息が上がって少し開いたその唇から目を逸らせない。

「世界中が、そして楓自身が、敵だって悪い女だっていっても、オレだけはそう思わない」

 大きく見開いた彼女の瞳に吸い込まれるようで。頬に添えた手の親指でそっと優しく唇をなぞった。

「楓は何も悪くない」

 今度は、はっきりと声に力をこめて、伝われ、と気持ちを込めて。

「ずっとずっと、楓の全部が好きだよ」

 可愛い。愛しい。
 真っ赤になった楓が固まったまま。

 返事を待てずにそっと唇を重ね、触れ合う温度を確かめながら。
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