傷だらけのシンデレラ 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
「社長でなくとも、生きてはいけます。…まあ、今のような贅沢な暮らしはできないとは思いますが」


愛理さんは愕然としていた。

身につけているものすべてがブランド物である愛理さんにとっては、今の暮らしが維持できないということは耐え難い屈辱だった。


「…あなたたちが僕ではなく、誠心誠意をもって澪に頭を下げたのであれば考え直すつもりでした。でも、そうはしなかった。自分のことしか考えられない方たちとは、これ以上付き合いきれません」


名取くんは乾いたため息をつく。


「ちょっと…パパ!どうにかしてよ…!!」

「わ、わかった…結弦くん。澪に謝ればいいんだな…?」

「もう遅いです。パフォーマンスだけの謝罪は結構」


名取くんはそう言い放つと席から立った。

そして、わたしに手を差し出す。


「うちに帰ろう。澪の居場所はここじゃない」


そうして、わたしを富士川家から連れ出してくれた。

本当の意味で。



その後、名取くんに言われたとおりにお父さんは社長職を辞任。

富士川電機とナトリホールディングスの取引は何事もなく継続しているけれど、長年続いた富士川家の親族経営はここで途絶えた。
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