傷だらけのシンデレラ 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
名取くんの吐息が耳にかかり、くすぐったさにわたしは身をよじらせる。


「忘れるはず…ないよ」


背中に名取くんの熱を感じながら、わたしはごくりと唾を飲み込んだ。


「壇上に上がったときにすぐ目にとまった。こんなところで会えるとは思ってなかったから驚いたけど、間違いなく澪だって」


淡々と挨拶をしているように見えたけど、実はそのときにはすでにわたしの存在に気づいていただなんて。


「俺…振られた側だから、馴れ馴れしく話しかけないほうがいいのかなと思って遠目に見ているだけだったけど…。澪があんなことになって、放っておけなかった」


“あんなこと”とは、わたしのパーティードレスがずり下がったトラブルだ。


「気づいたら体が勝手に動いてた。あの場では周りの視線もあって他人のフリをしていたけど…」


…そうだったんだ。

そんなことまで考えてくれて。


「平静を装いながらパーティーに戻ったけど、部屋に帰ったら澪がいなくなってるんじゃないかと思って…本当は慌てて戻ってきた」

「そ、そうだったの…?」

「だって、8年前もそうだったから。勝手に俺の前からいなくなって…」


名取くんと別れてからわたしは学校を辞めて、お母さんと夜逃げ同然で住んでいたアパートを出た。
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