傷だらけのシンデレラ 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
事情が事情で、わたしは“居候の姪”として連れてこられたけど、本当のところは家族というよりは家政婦として扱われていること。

愛理さんと由美さんからは、嫌がらせを受けていること。

お父さんはそれを知っていて、見て見ぬふりをしていること。


そんなことまで包み隠さず話してしまったら、きっとやさしい名取くんなら心配するだろうから…。


――だから、話さない。


今はそれなりに幸せに暮らしていると思ってもらわないと、わたし自身が惨めに思えてくるから。


「…あっ。もうこんな時間」


ふと時計に目を移すと、日付をまたごうとしていた。


「名取くん。わたし、そろそろ帰るね」


久々に会ったら、時間も忘れて話してしまっていた。

わたしには休みはなく明日も仕事だし、名取くんのほうがわたしなんかよりも忙しいだろうし。


そう思いながら、ソファから立ったとき――。


「澪っ…」


名取くんがわたしの腕をつかんだ。


「どうかした?」

「さっき、帰りはうちの運転手に送らせるって言ったんだけど…」

「それなら大丈夫だよ。タクシー拾って帰るから――」

「いや、そうじゃなくて」


名取くんは、目を伏せて唇を噛む。
< 34 / 104 >

この作品をシェア

pagetop