傷だらけのシンデレラ 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
「当たり前だろ。冗談なんかであんなこと言わないよ」


名取くんの大きな手で頭をわしゃわしゃと撫でられ、わたしは思わず笑みがこぼれた。


「澪、夫婦になろう」

「うん」


こうして、わたしたちは婚姻届にサインをし、その日のうちに役所へ提出した。


本当にわたしたち、夫婦になったんだ。

つい昨日のわたしは絶望の中にいたというのに、人生が180度変わって今は幸せの真っ只中にいる。


しかし、これは秘密の結婚だ。


名取くんは、世界のナトリホールディングスの次期社長。

スキャンダルは株価にも影響し、結婚するとなると本来ならば慎重に事を進めていかなければならない。


交際0日で結婚したとなれば、計画性がないと株主たちから厳しく追求される可能性は十分にある。


それに、わたしの田沼さんとの結婚の問題もある。

田沼さんが代筆された婚姻届を提出しても受理はされないため、すぐさまお父さんに連絡がいくだろう。


わたしと名取くんが結ばれるには、ひとつずつ順を追って解決しなければならない事柄が山積みで、決して勢いで結婚していいものではなかった。

しかし、それだと田沼さんとの入籍日までには到底間に合わない。
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