時を縫う英雄譚
その夜。
公安本部。
報告書が、静かに提出された。
ーーー
【結果:虚影鎮圧】
【人的被害:軽微】
【裁定:適正】
ーーー
どれも、正しい。
どれも、嘘ではない。
「よ!クロノス」
背後から、声。
フォールだった。
「見た?」
「……見た」
「どうだった?」
透は、すぐに答えられなかった。
フォールは、笑わない。
「ね。
ほどけば、楽になるって言ったでしょ」
「……何を」
フォールは、壁に触れた。
縫い目が、静かにほどける。
一瞬、世界が揺らぐ。
「今日の子、
“何もなかった”ことにできるよ」
透の心臓が、跳ねる。
「記憶も、恐怖も、
最初から無かったことに」
「……それは…罪?」
フォールは首を傾げる。
「それとも、救済?」
その言葉の向こうで、
芽吹が、ガラス越しに立っていた。
こちらを見ている。
止めない。
止められない。
裁く側だから。
透は、拳を握りしめた。
縫えば、救える。
ほどけば、壊さずに済む。
どちらも、彼女の規律を壊す。
――選べ。
世界が、
そう囁いた。
公安本部。
報告書が、静かに提出された。
ーーー
【結果:虚影鎮圧】
【人的被害:軽微】
【裁定:適正】
ーーー
どれも、正しい。
どれも、嘘ではない。
「よ!クロノス」
背後から、声。
フォールだった。
「見た?」
「……見た」
「どうだった?」
透は、すぐに答えられなかった。
フォールは、笑わない。
「ね。
ほどけば、楽になるって言ったでしょ」
「……何を」
フォールは、壁に触れた。
縫い目が、静かにほどける。
一瞬、世界が揺らぐ。
「今日の子、
“何もなかった”ことにできるよ」
透の心臓が、跳ねる。
「記憶も、恐怖も、
最初から無かったことに」
「……それは…罪?」
フォールは首を傾げる。
「それとも、救済?」
その言葉の向こうで、
芽吹が、ガラス越しに立っていた。
こちらを見ている。
止めない。
止められない。
裁く側だから。
透は、拳を握りしめた。
縫えば、救える。
ほどけば、壊さずに済む。
どちらも、彼女の規律を壊す。
――選べ。
世界が、
そう囁いた。