時を縫う英雄譚
第二章

第一話

 数日後。

 透は自室のベッドの上で、真っ暗な天井を見つめていた。
 

 授業も、任務も、全部どうでもよかった。

 時計の針が動く音すら、耳障りに感じる。


 「透……」


 ドアが開く音がして、芽吹が声をかける。

 彼女は無理に明るい声を作りながらも、その目には優しさと心配が滲んでいた。


 「灯ちゃんのこと、気にしてるんでしょ。
 でも……あなただけのせいじゃない。
 私だって届く範囲にいたのに…ごめんなさい」

 「……わかってるよ。
 でも、わかってても……悔しいんだよ。
 あのとき、動けたのは俺だ。兄の俺なんだ。」

 芽吹は言葉を失い、顔を歪めて苦しそうに微笑む透の肩に手を置いた。


 「何のために俺が縫ってきたのか、わかんねぇ…
  結局、全部無駄なんだよ」


 
 彼女もまた、同じ戦場を見てきたからこそ、自嘲的に笑う彼に軽い慰めなど言えなかった。

 ただ、彼の背中を包むように、温もりだけを置いていった。


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