時を縫う英雄譚
第二話
朝。
薄明の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋にパンの香ばしい匂いが満ちていた。
透が寝返りを打つと、台所から妙に機嫌のいい鼻歌が聞こえてくる。
「……朝からうるさいな……」
重たい体を引きずってリビングに出ると、フォールがエプロン姿で振り返った。
「お、起きたか!
朝食できてるぞ。トーストとサラダ、あと――」
ミキサーを指さす。
「健康に配慮したスムージー!」
「その言い方、信用できないな」
「大丈夫だって。致死量は入れてないからね」
「基準そこかよ」
透は渋々コップを受け取り、一口飲む。
一瞬、眉をひそめ――次の瞬間、拍子抜けしたように息を吐いた。
「……あれ、普通にうまい」
「だろ?」
フォールは得意げに笑う。
「キウイとヨーグルト。あと、ほんの少しだけブロッコリー」
「“ほんの少し”って言い方が一番怪しい」
「疑心暗鬼すぎだよ、透。兄ちゃん寂しい」
言い合いながら、透はトーストをかじる。
――久しぶりに、食事の味がした。
「……なあ」
「ん?」
「監視って、こんなことまでやる仕事なのか?」
食器を洗うフォールの手が、一瞬だけ止まる。
だがすぐに、いつもの軽い調子に戻った。
「さあ?
俺は“必要だと思ったこと”をやってるだけだよ。」
ニコリと微笑むフォールは妙に優しくて、
同時に霧に包まれているように、曖昧だった。
薄明の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋にパンの香ばしい匂いが満ちていた。
透が寝返りを打つと、台所から妙に機嫌のいい鼻歌が聞こえてくる。
「……朝からうるさいな……」
重たい体を引きずってリビングに出ると、フォールがエプロン姿で振り返った。
「お、起きたか!
朝食できてるぞ。トーストとサラダ、あと――」
ミキサーを指さす。
「健康に配慮したスムージー!」
「その言い方、信用できないな」
「大丈夫だって。致死量は入れてないからね」
「基準そこかよ」
透は渋々コップを受け取り、一口飲む。
一瞬、眉をひそめ――次の瞬間、拍子抜けしたように息を吐いた。
「……あれ、普通にうまい」
「だろ?」
フォールは得意げに笑う。
「キウイとヨーグルト。あと、ほんの少しだけブロッコリー」
「“ほんの少し”って言い方が一番怪しい」
「疑心暗鬼すぎだよ、透。兄ちゃん寂しい」
言い合いながら、透はトーストをかじる。
――久しぶりに、食事の味がした。
「……なあ」
「ん?」
「監視って、こんなことまでやる仕事なのか?」
食器を洗うフォールの手が、一瞬だけ止まる。
だがすぐに、いつもの軽い調子に戻った。
「さあ?
俺は“必要だと思ったこと”をやってるだけだよ。」
ニコリと微笑むフォールは妙に優しくて、
同時に霧に包まれているように、曖昧だった。