時を縫う英雄譚
地下通路を歩きながら、芽吹は拳を握りしめていた。


(……ごめんね、一ノ瀬)


 仲間として並ぶことと、
 責任者として縛ることは、まったく違う。

 透は強すぎる。
 そして、優しすぎる。
 だから公安は、彼を信用しない。


「ねえ、ヴァイン」


 透の声。


「俺さ……」

「わかってる」


 芽吹は立ち止まらずに言った。


「息苦しい、よね、ごめん。
 でも、今は我慢して」

「……それ、委員長の時みたいだな。
 大丈夫だよ、俺なら大丈夫」


 芽吹の胸が、きゅっと痛んだ。
 “守る”ために、
 “縛る”側に回ってしまった自分。

(それでも――)


 彼を、失うよりはずっといい。
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