完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
 その頃。
 里美の部屋には、
 だらしない空気が満ちていた。

 ソファに、智也が転がり込んでいる。

 「ねえ、智也」

 里美が、機嫌のいい声で言った。

 「お手柄だよ
  優希ってやつ、目障りだったし」

 智也は、鼻で笑う。

 「だろ?」
 「なんかさ、ああいう真面目な男
  無性にムカつくんだよ」

 「ふふ」
 「でも、よくやった」

 里美は、そう言って、
 智也に身体を寄せた。

 「……俺、里美にぞっこんだからさ」

 智也が、照れたように言う。

 「ほんと、単純」
 「それに、報酬がたっぷり出るかもよ」

 里美は、からかうように笑いながら、
 そっと腕を回した。
 唇が触れる。
 深くはない。
 でも、逃げ場を与えない距離。

 「もう……せっかちなんだから」

 そう言いながらも、
 里美は拒まない。

 二人の身体は、
 自然に重なっていく。

 考えることをやめた者同士の、
 軽くて、危うい熱。

 その裏で、
 誰かが確実に追い詰められていることなど、
 二人は、気にも留めていなかった。

 ——だが。
 マサトの調査は、
 すでにこの部屋の輪郭を、
 正確に捉え始めていた。

 静かに。
 逃げ場を塞ぐように。

 この先、
 「遊び」の代償が、
 一気に形を持つことになるとは知らずに。
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