『爆走!メカニカル・シンデレラ 〜恋のバグは、無敵のガジェットでも直せません!〜』
第二話:感傷的(センチメンタル)な回路遮断 〜檻の中のお姫様と、暴走する独占欲〜
1. 誘惑のシリコンバレー・ナイト
「……湊くん、本当に行くの? 私、こういう華やかなパーティーはやっぱり苦手なんだけど」
鏡の前で、私はため息をついた。今日の私は、一ノ瀬グループが主催する新作発表会のレセプション・パーティーの主役。七海が「世界中の度肝を抜く」と豪語して仕立てたドレスは、光の当たり方で回路図のような模様が浮かび上がる、まさに『着る精密機械』。
「嫌いじゃないだろ? 君の才能を世界に見せつける舞台だ。……それに」
湊くんが背後から私の首元に、大粒のピンクダイヤが輝くネックレスを掛けた。ひんやりとした金属の感触。彼の手が私の鎖骨をなぞり、そのまま髪をかき上げて、耳元で熱く囁く。
「……こんなに綺麗な君を、僕以外の男に見せるのは、本当は死ぬほど嫌なんだ。……今すぐこのドレスを破り捨てて、僕の部屋に閉じ込めてしまいたい」
「……っ、湊くん……!」
心臓が跳ねる。湊くんの独占欲は、高校生の頃よりもずっと深く、暗く、そして甘くなっている。耳たぶをかすめる彼の熱い吐息に、私の脳内CPUは一瞬でオーバーヒート寸前だ。
「……一ノ瀬常務、如月様。レオナルド・V・スミス氏がお見えです」
秘書の事務的な声が、甘い空気を切り裂いた。湊くんの瞳が、一瞬で氷のように冷たく、鋭いビジネスマンのそれに切り替わる。私はそのギャップに、いつもゾクゾクしてしまう。
現れたレオナルドは、不敵な笑みを浮かべていた。
「素晴らしい。カンナさん、君はやはり光の下がよく似合う。……どうかな、一度僕の最新の『感覚同期ルーム』を体験してみないか? 君の『ハート・リンク』の真の可能性を、僕なら引き出せる」
湊くんは私の腰を抱き寄せ、彼を牽制するように微笑んだ。
「お誘いは光栄ですが、彼女のスケジュールは僕が管理しています。……レオナルド氏、彼女の『可能性』を知っているのは、この世で僕一人だけで十分ですよ」
2. 鋼鉄の檻、沈黙のアクセス
パーティーの最中、ちょっとしたトラブルが起きた。会場の照明システムに「バグ」が発生したのだ。
「……おかしいわ。この予兆は、人為的なもの……?」
メカニックとしての本能が警鐘を鳴らす。私は湊くんの制止を振り切り、予備の制御盤があるVIPエリアの奥へと向かった。
だが、それが罠だった。
「――ようこそ、カンナさん。ここは外部の電波を完全に遮断する、僕のプライベート・ラボだ」
背後で扉が閉まり、電子ロックがかかる。現れたのはレオナルド。
「湊くんとの『同期』は、ここでは無効だ。君の指輪も、インカムも、今はただのガラクタだ。……さあ、契約書にサインを。君の才能は、あんな嫉妬深い男の所有物であっていいはずがない」
私はバッグから、常に携帯している『マルチ・レーザー・ツール』を取り出した。
「……残念ね、レオナルド。私は『檻の中のお姫様』を演じるつもりはないわ。機械は、愛してあげなきゃ言うことを聞かない。……そして、私は一ノ瀬湊の『愛』以外の命令(コード)は受け付けない仕様なの!」
私は壁のパネルを剥ぎ取り、光速で配線を組み替える。
だが、レオナルドが持ち出したのは、かつてのプロジェクトZを彷彿とさせる『強制意識介入装置』だった。
「強情だね。……なら、君の脳を直接ハッキングさせてもらおうか」
装置が起動し、私の意識が遠のいていく。脳が焼き切れるような熱。
(……湊くん。湊くん……!)
心の奥底で、私は彼の名前を叫んだ。
その時。
――ドォォォォォン!!
重厚な防音扉が、物理的な衝撃で、まるで紙屑のように吹き飛んだ。
煙の中から現れたのは、かつて見たこともないほど「壊れた」表情の湊くんだった。
3. 「最恐」の救出劇
「……僕の、何に触れたと言った?」
湊くんの声は、もはや人間のそれとは思えないほど低く、地獄の底から響くような怒りに満ちていた。
彼の背後には、最新型の自律戦闘ドローンを引き連れたシオンと、特製バズーカ(の中身を麻酔弾に変えたもの)を担いだ雷太。
「湊……! なぜここが分かった! 全ての信号は遮断したはずだ!」
レオナルドが狼狽する。
「……無駄だよ。僕と彼女の間には、電波なんて不確かなものは必要ない。……彼女の薬指にある指輪。そこには僕の『心拍数』が常に刻まれている。……彼女の鼓動が乱れた瞬間、僕の世界は終わったんだ」
湊くんが、一歩、レオナルドに歩み寄る。その威圧感に、シリコンバレーの帝王が数歩後ずさる。
「……レオナルド。君の会社、さっき『全財産』を買い取らせてもらったよ。……君はもう、この世界で何も所有することはできない。……特に、僕のカンナに関してはね」
湊くんは、震える私を抱きかかえ、自分の腕の中に閉じ込めた。
「……カンナ、遅くなってごめん。……怖かったね。……もう大丈夫、全部僕が消してあげるから」
湊くんの腕は、痛いくらいに私を締め付けた。その強さが、彼がいかに私を失うことを恐れていたかを物語っていて、私は涙が止まらなくなる。
「……湊くん。……私、大丈夫だよ。……あなたが来てくれるって、分かってたから」
湊くんは、私の涙を唇で拭い、そのまま、全校生徒(ではないけれど、大勢のスタッフや敵)が見ている前で、深く、狂おしいほどのキスをした。
4. 壊れるほどに、メンテナンスして
ホテルのスイートルームに戻った後。
湊くんは、私をベッドに下ろすと、自分もその上に覆いかぶさった。
彼の目はまだ、怒りと独占欲でギラギラと燃えている。
「……カンナ。……さっきの男、君のどこに触れた? 首? 腕? それとも……」
「……触れられてないよ。湊くん、落ち着いて」
「……落ち着けるわけないだろ! 君が僕の届かない場所に行った一分一秒が、僕にとっては永遠の地獄だったんだ!」
湊くんが私のドレスの肩紐を、乱暴に引き下ろす。剥き出しになった肩に、彼は自分の所有権を主張するように、強く、深く、キスマークを刻みつけた。
「……あ、っ……湊くん……痛い……」
「……痛いくらいでいい。……君の体に、僕以外の記憶を残させたくないんだ。……いいかい、カンナ。君のこの肌も、この声も、この涙も。……全部、僕が買い占めたんだ。……他人にアクセスさせる隙なんて、一ミリも作らせない」
湊くんの手が、私の腰を強く掴み、自分の方へと引き寄せる。
彼の激しい心臓の音が、私の背中に直接伝わってくる。
あの日、学園で「二人で一つになろう」と誓ったあの時よりも、今の彼はもっと……私に対して「貪欲」だ。
「……湊くん。……私、壊れちゃうよ」
「……壊れたら、僕が一生かけて直してあげる。……何度でも、何度でも。……君が、僕なしでは生きていけない機械になるまで」
湊くんの唇が、私の首筋から耳元へと這い上がる。
「……カンナ。……好きだよ。……愛してる。……世界中の誰が君を称賛しても、君の唯一の『ユーザー』は、僕一人だけだ」
「……っ……、私も。……湊くん、私を、いっぱいに……上書きして……」
窓の外では、マンハッタンの夜景が輝いている。
けれど、今の私には、目の前にいる、この重すぎる愛を持った王子様しか見えない。
私たちの愛のプログラムは、今夜、かつてないほどの高負荷で実行され、二人の意識を一つに溶かしていった。
5. 伏線回収:五ミリの隙間の「最新版」
翌朝。差し込む光の中で、私は湊くんの腕の中で目を覚ました。
湊くんは、まだ眠っている私の薬指を、無意識に口づけている。
(……ふふ。最強のプロデューサーも、寝顔はただの寂しがり屋の男の子だわ)
私は、彼の枕元に置いてあった、レオナルドから奪い返した私のバッグを見つめた。
そこには、昨日の混乱の中で私が密かに「改造」を施した、レオナルドの会社のメインサーバーへの『バックドア・キー』が入っていた。
「……レオナルド。私の湊くんを怒らせた代償は、高くつくわよ」
かつての「天才の魔法」は、今や「愛する人を守るための牙」へと進化していた。
湊くんが目を覚まし、私を見て、幸せそうに目を細める。
「……カンナ。……おはよう。……まだ、僕の腕の中にいるね。バグじゃないよね?」
「……おはよう、湊くん。……フル充電、完了よ。……さあ、世界を驚かせにいきましょうか?」
「……ああ。……でもその前に、もう一度だけ『動作確認』をさせて」
再び重なる唇。
二人の恋の周波数は、もはや世界中のどんな通信規格でも傍受できない、二人だけの『絶対領域』へと達していた。
だが、物語はまだ終わらない。
つづく
「……湊くん、本当に行くの? 私、こういう華やかなパーティーはやっぱり苦手なんだけど」
鏡の前で、私はため息をついた。今日の私は、一ノ瀬グループが主催する新作発表会のレセプション・パーティーの主役。七海が「世界中の度肝を抜く」と豪語して仕立てたドレスは、光の当たり方で回路図のような模様が浮かび上がる、まさに『着る精密機械』。
「嫌いじゃないだろ? 君の才能を世界に見せつける舞台だ。……それに」
湊くんが背後から私の首元に、大粒のピンクダイヤが輝くネックレスを掛けた。ひんやりとした金属の感触。彼の手が私の鎖骨をなぞり、そのまま髪をかき上げて、耳元で熱く囁く。
「……こんなに綺麗な君を、僕以外の男に見せるのは、本当は死ぬほど嫌なんだ。……今すぐこのドレスを破り捨てて、僕の部屋に閉じ込めてしまいたい」
「……っ、湊くん……!」
心臓が跳ねる。湊くんの独占欲は、高校生の頃よりもずっと深く、暗く、そして甘くなっている。耳たぶをかすめる彼の熱い吐息に、私の脳内CPUは一瞬でオーバーヒート寸前だ。
「……一ノ瀬常務、如月様。レオナルド・V・スミス氏がお見えです」
秘書の事務的な声が、甘い空気を切り裂いた。湊くんの瞳が、一瞬で氷のように冷たく、鋭いビジネスマンのそれに切り替わる。私はそのギャップに、いつもゾクゾクしてしまう。
現れたレオナルドは、不敵な笑みを浮かべていた。
「素晴らしい。カンナさん、君はやはり光の下がよく似合う。……どうかな、一度僕の最新の『感覚同期ルーム』を体験してみないか? 君の『ハート・リンク』の真の可能性を、僕なら引き出せる」
湊くんは私の腰を抱き寄せ、彼を牽制するように微笑んだ。
「お誘いは光栄ですが、彼女のスケジュールは僕が管理しています。……レオナルド氏、彼女の『可能性』を知っているのは、この世で僕一人だけで十分ですよ」
2. 鋼鉄の檻、沈黙のアクセス
パーティーの最中、ちょっとしたトラブルが起きた。会場の照明システムに「バグ」が発生したのだ。
「……おかしいわ。この予兆は、人為的なもの……?」
メカニックとしての本能が警鐘を鳴らす。私は湊くんの制止を振り切り、予備の制御盤があるVIPエリアの奥へと向かった。
だが、それが罠だった。
「――ようこそ、カンナさん。ここは外部の電波を完全に遮断する、僕のプライベート・ラボだ」
背後で扉が閉まり、電子ロックがかかる。現れたのはレオナルド。
「湊くんとの『同期』は、ここでは無効だ。君の指輪も、インカムも、今はただのガラクタだ。……さあ、契約書にサインを。君の才能は、あんな嫉妬深い男の所有物であっていいはずがない」
私はバッグから、常に携帯している『マルチ・レーザー・ツール』を取り出した。
「……残念ね、レオナルド。私は『檻の中のお姫様』を演じるつもりはないわ。機械は、愛してあげなきゃ言うことを聞かない。……そして、私は一ノ瀬湊の『愛』以外の命令(コード)は受け付けない仕様なの!」
私は壁のパネルを剥ぎ取り、光速で配線を組み替える。
だが、レオナルドが持ち出したのは、かつてのプロジェクトZを彷彿とさせる『強制意識介入装置』だった。
「強情だね。……なら、君の脳を直接ハッキングさせてもらおうか」
装置が起動し、私の意識が遠のいていく。脳が焼き切れるような熱。
(……湊くん。湊くん……!)
心の奥底で、私は彼の名前を叫んだ。
その時。
――ドォォォォォン!!
重厚な防音扉が、物理的な衝撃で、まるで紙屑のように吹き飛んだ。
煙の中から現れたのは、かつて見たこともないほど「壊れた」表情の湊くんだった。
3. 「最恐」の救出劇
「……僕の、何に触れたと言った?」
湊くんの声は、もはや人間のそれとは思えないほど低く、地獄の底から響くような怒りに満ちていた。
彼の背後には、最新型の自律戦闘ドローンを引き連れたシオンと、特製バズーカ(の中身を麻酔弾に変えたもの)を担いだ雷太。
「湊……! なぜここが分かった! 全ての信号は遮断したはずだ!」
レオナルドが狼狽する。
「……無駄だよ。僕と彼女の間には、電波なんて不確かなものは必要ない。……彼女の薬指にある指輪。そこには僕の『心拍数』が常に刻まれている。……彼女の鼓動が乱れた瞬間、僕の世界は終わったんだ」
湊くんが、一歩、レオナルドに歩み寄る。その威圧感に、シリコンバレーの帝王が数歩後ずさる。
「……レオナルド。君の会社、さっき『全財産』を買い取らせてもらったよ。……君はもう、この世界で何も所有することはできない。……特に、僕のカンナに関してはね」
湊くんは、震える私を抱きかかえ、自分の腕の中に閉じ込めた。
「……カンナ、遅くなってごめん。……怖かったね。……もう大丈夫、全部僕が消してあげるから」
湊くんの腕は、痛いくらいに私を締め付けた。その強さが、彼がいかに私を失うことを恐れていたかを物語っていて、私は涙が止まらなくなる。
「……湊くん。……私、大丈夫だよ。……あなたが来てくれるって、分かってたから」
湊くんは、私の涙を唇で拭い、そのまま、全校生徒(ではないけれど、大勢のスタッフや敵)が見ている前で、深く、狂おしいほどのキスをした。
4. 壊れるほどに、メンテナンスして
ホテルのスイートルームに戻った後。
湊くんは、私をベッドに下ろすと、自分もその上に覆いかぶさった。
彼の目はまだ、怒りと独占欲でギラギラと燃えている。
「……カンナ。……さっきの男、君のどこに触れた? 首? 腕? それとも……」
「……触れられてないよ。湊くん、落ち着いて」
「……落ち着けるわけないだろ! 君が僕の届かない場所に行った一分一秒が、僕にとっては永遠の地獄だったんだ!」
湊くんが私のドレスの肩紐を、乱暴に引き下ろす。剥き出しになった肩に、彼は自分の所有権を主張するように、強く、深く、キスマークを刻みつけた。
「……あ、っ……湊くん……痛い……」
「……痛いくらいでいい。……君の体に、僕以外の記憶を残させたくないんだ。……いいかい、カンナ。君のこの肌も、この声も、この涙も。……全部、僕が買い占めたんだ。……他人にアクセスさせる隙なんて、一ミリも作らせない」
湊くんの手が、私の腰を強く掴み、自分の方へと引き寄せる。
彼の激しい心臓の音が、私の背中に直接伝わってくる。
あの日、学園で「二人で一つになろう」と誓ったあの時よりも、今の彼はもっと……私に対して「貪欲」だ。
「……湊くん。……私、壊れちゃうよ」
「……壊れたら、僕が一生かけて直してあげる。……何度でも、何度でも。……君が、僕なしでは生きていけない機械になるまで」
湊くんの唇が、私の首筋から耳元へと這い上がる。
「……カンナ。……好きだよ。……愛してる。……世界中の誰が君を称賛しても、君の唯一の『ユーザー』は、僕一人だけだ」
「……っ……、私も。……湊くん、私を、いっぱいに……上書きして……」
窓の外では、マンハッタンの夜景が輝いている。
けれど、今の私には、目の前にいる、この重すぎる愛を持った王子様しか見えない。
私たちの愛のプログラムは、今夜、かつてないほどの高負荷で実行され、二人の意識を一つに溶かしていった。
5. 伏線回収:五ミリの隙間の「最新版」
翌朝。差し込む光の中で、私は湊くんの腕の中で目を覚ました。
湊くんは、まだ眠っている私の薬指を、無意識に口づけている。
(……ふふ。最強のプロデューサーも、寝顔はただの寂しがり屋の男の子だわ)
私は、彼の枕元に置いてあった、レオナルドから奪い返した私のバッグを見つめた。
そこには、昨日の混乱の中で私が密かに「改造」を施した、レオナルドの会社のメインサーバーへの『バックドア・キー』が入っていた。
「……レオナルド。私の湊くんを怒らせた代償は、高くつくわよ」
かつての「天才の魔法」は、今や「愛する人を守るための牙」へと進化していた。
湊くんが目を覚まし、私を見て、幸せそうに目を細める。
「……カンナ。……おはよう。……まだ、僕の腕の中にいるね。バグじゃないよね?」
「……おはよう、湊くん。……フル充電、完了よ。……さあ、世界を驚かせにいきましょうか?」
「……ああ。……でもその前に、もう一度だけ『動作確認』をさせて」
再び重なる唇。
二人の恋の周波数は、もはや世界中のどんな通信規格でも傍受できない、二人だけの『絶対領域』へと達していた。
だが、物語はまだ終わらない。
つづく