『爆走!メカニカル・シンデレラ 〜恋のバグは、無敵のガジェットでも直せません!〜』
最終話:ハッピーエンド・フルインストール
1. 純白のギア、震えるシンデレラ
「……信じられない。私、本当にこのドレスを着てるんだよね」
鏡の中に映る自分は、まるで見知らぬお姫様のようだった。
七海が「全財産と全センスを注ぎ込んだ」と豪語するウェディングドレス。純白のシルクには、光の反射で繊細な歯車の模様が浮かび上がり、裾には私がかつて開発した極細の光ファイバーが織り込まれ、私の心拍数に合わせて淡く、優しく発光している。
「カンナっち、動かないで! 口紅が少しズレたじゃない。……もう、世界一可愛い花嫁さんなんだから、自信持ってよ」
七海が泣きそうな笑顔でブラシを動かす。傍らでは、正装に身を包んだ雷太が「今日は絶対に爆発させないからな!」と鼻をすすり、シオンが「……教会のセキュリティ、僕が完璧に掌握した。世界中のハッカーが束になっても、君たちの誓いを邪魔させはしない」と、眼鏡を光らせながらノートPCを叩いている。
みんな、変わっていない。
あの放課後の工芸準備室で始まった私たちの物語が、今日、一つの大きな完成(コンプリート)を迎えようとしていた。
「……失礼するよ」
控え室の重厚な扉が開いた。そこに立っていたのは、純白のタキシードを纏った湊くんだった。
ミルクティー色の髪をきっちりと整え、いつも以上に凛々しく、そして……狂おしいほどの情熱をその瞳に湛えて。
「あ……湊くん。あの、あんまり見ないで。恥ずかしい……」
私が俯くと、湊くんは迷うことなく歩み寄り、私の手を取った。手袋越しでも伝わってくる、彼の指先の熱。
「……無理だよ、カンナ。君から目を逸らすなんて、僕の全システムが拒否している。……綺麗だ。あまりに綺麗すぎて、このまま教会の扉を溶接して、誰にも見せずに僕だけのものにしてしまいたい……」
「……もう。湊くん、相変わらず愛が重すぎるよ」
「……分かっているだろ? 僕にとって君は、一生かけても解析しきれない、最高の『バグ』なんだから」
湊くんが私の額に、誓いのような熱いキスを落とした。
指先に嵌められた『ギアの指輪』。あの日、屋上で交わした約束の指輪が、今日は本物の結婚指輪として、二人の未来を繋ぐ唯一の回路(ゲート)になろうとしていた。
2. 世界が祝福する「最終バグ」
セント・ギアス大聖堂。
世界中に生中継される中、私たちはバージンロードを歩いていた。
沿道を埋め尽くす人々、そして画面の向こう側にいる数億人の人々が、私たちの開発した『ハート・リンク』を通じて、温かな「祝福の感情」を届けてくれている。
けれど、その時だった。
(……っ! なに、これ……。頭が、熱い……!)
突然、私の脳内に、津波のような膨大なデータが流れ込んできた。
世界中の人々が送ってくれる「おめでとう」「お幸せに」という膨大な感情のエネルギー。
かつてのプロジェクトZが私の脳に残した『感情演算回路』が、あまりにも巨大すぎる「幸せ」の負荷に耐えきれず、暴走(オーバーロード)を始めたのだ。
「……あ……っ」
私の膝から崩れ落ちそうになるのを、湊くんが咄嗟に抱きとめた。
「カンナ!? どうしたんだ!」
「……湊、くん。……ダメ。世界中の『祝福』が……私の脳に直結(アクセス)してる。……このままだと、私の意識が……焼き切れちゃう……!」
視界が白く塗りつぶされていく。
幸せすぎて、壊れてしまう。
神様は、最後の最後まで私に「普通の幸せ」を許してくれないのか。
『――カンナ、湊! 聞こえるか!』
インカムからシオンの叫び声が響く。
『「ハート・リンク」を通じて、世界中の善意が逆流している! カンナの脳の演算処理が限界(クリティカル)だ。あと三十秒で、彼女の記憶回路が強制シャットダウンされるぞ!』
「……そんなこと、させるか!」
湊くんの叫びが、聖堂全体に響き渡った。
彼は迷うことなく、自分の左手を私の左手に重ね、指輪同士を強く接触させた。
「湊くん、ダメ! あなたの脳まで、道連れになっちゃう!」
「……構わない! 君を失うくらいなら、僕の全記憶を消去したって構わない! ……カンナ、僕を信じて。僕の『独占欲(システム)』を、君に解放する!」
湊くんが、指輪に隠されていた最終プロトコルを起動させた。
それは、第10話で両親が遺した「共有」のさらに先を行く、湊くん自身が数年かけて開発した『絶対同期(フル・シンクロ)』。
「――僕の愛で、君の苦しみを、全部上書き(オーバーライド)してやる!!」
3. 深淵の同期:愛という名の過電流
視界が真っ白な世界に、湊くんの意識が流れ込んできた。
それは、言葉なんて必要ない、純度百パーセントの「湊くんそのもの」。
(……熱い。湊くん、あなたの心、こんなに熱かったの……?)
意識の深淵で、私は見た。
彼がこれまでの人生で、どれほど私を守るために自分を削ってきたか。
世界中が私を「女神」と崇める中で、彼だけが、油まみれで泣いていた「ただの私」を愛し続けようと、どれほど必死に孤独と戦ってきたか。
『カンナ……。君がいない世界なんて、僕には一行のコードも書けない。……僕の心臓は、君の笑顔をメンテナンスするために動いているんだ』
彼の執着、嫉妬、独占欲、そして何よりも深い……狂おしいほどの慈愛。
そのすべてが私の脳内にインストールされ、暴走していた感情の波を、一つ、また一つと「幸せ」という名の正しいフォルダへ整理していく。
(……ああ。私、一人じゃない。湊くんが、私の命を半分背負ってくれてる)
私たちの意識は、周波数を超えて完全に一つに溶け合った。
五ミリの隙間も、一ミクロンの隔たりもない。
二人の魂が、一つの回路として完璧に噛み合った瞬間。
パリン!
脳内で、何かが壊れる音がした。
それは、私を苦しめてきたプロジェクトZの「呪い」が、あまりにも強大な二人の愛の電力に耐えきれず、ついに完全消滅した音だった。
「……っ……、はぁ、はぁ……」
意識が戻った時、私は湊くんの腕の中で、彼を見上げていた。
聖堂は静まり返り、世界中が、抱き合う私たちの姿を固唾を呑んで見守っていた。
「……湊くん。……私、生きてる」
「……ああ。……デバッグ、完了だ。僕の、世界一わがままなシンデレラ」
湊くんが、震える手で私の頬を包み込んだ。彼の目には、見たこともないほどの涙が溜まっていた。
「……もう、どこにも行かせない。神様にだって、君の一秒も譲らないから」
湊くんが、全校生徒(と世界中の視聴者)の前で、ひざまずいて誓った。
「如月カンナ。……君の人生の全バグ、全エラー、そして全幸せを、僕が一生をかけてメンテナンスすることを誓う。……僕と、真の『生涯契約』を結んでくれるかい?」
私は、涙を流しながら、最高の笑顔で頷いた。
「……当たり前でしょ。……私の心にアクセスできるのは、あの日からずっと……湊くん、あなた一人だけなんだから!」
世界中が、これまでで最高の歓喜に包まれた。
空飛ぶドローンが祝福の花吹雪を散らし、雷太が(今回だけは許可を得て)虹色の煙火を打ち上げる。
七海が「最高に綺麗だよ!」と号泣し、シオンが満足げに「……全システム、ハッピーエンドを確認」と呟いた。
4. 永久のプログラム、起動
数年後。
海が見える静かな丘の上に、小さな研究所兼自宅を建てた。
私は今も、人々を笑顔にするための新しいガジェットを作り続けている。
天才の力はもうないけれど、私の隣には、最高のプロデューサーがいてくれる。
「……ママ! パパがまた、私の『空飛ぶおもちゃ』に勝手にパスワードかけて、自分しか触れないようにしたよ!」
五歳になる娘のカノンが、唇を尖らせて走ってきた。
彼女の手にあるのは、私が作った小さなドローン。
「あはは……。湊くん、娘にまで独占欲出さなくていいのに」
「……ダメだよ。カノンの才能が世界に見つかったら、また悪い奴らが寄ってくる。……カンナ、君とカノンを守るのが、僕のメインタスクなんだから」
スーツ姿で仕事から帰ってきた湊くんが、カノンを抱き上げ、そして……私を後ろから抱きしめた。
「……ただいま、カンナ。……今日も、僕のこと、一番に考えてくれた?」
「……おかえり、湊くん。……仕事中も、三十分おきにあなたのこと、脳内検索(サーチ)してたわよ」
「……ふふ、合格だ」
湊くんが私の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込む。
十年経っても、彼の愛は重く、甘く、そして救いようがないほど真っ直ぐだ。
窓の外では、私たちがかつて守り抜いた学園の卒業生たちが、新しい未来へと羽ばたいている。
バグがあって、エラーがあって、思い通りにいかない世界。
けれど、私たちは知っている。
不完全だからこそ、誰かと手を取り合い、最高の回路を築けるのだと。
私は左手の指輪を見つめ、そっと微笑んだ。
私たちの物語に、終わり(エンドロール)はない。
毎日が、新しいアップデート。
毎日が、新しい「好き」の積み重ね。
「……さあ、湊くん。今日の夕食の献立、一緒に『プログラミング』しましょうか?」
「……ああ。……デザートは、君がいいな」
「……もうっ、パパのバカ!」
笑い合う家族の声が、初夏の風に乗って、青い海へと溶けていく。
恋の回路は、永遠に焼き切れることなく、最高出力で輝き続けていた。
『爆走!メカニカル・シンデレラ』
――ハッピーエンド、永久保存完了。
「……信じられない。私、本当にこのドレスを着てるんだよね」
鏡の中に映る自分は、まるで見知らぬお姫様のようだった。
七海が「全財産と全センスを注ぎ込んだ」と豪語するウェディングドレス。純白のシルクには、光の反射で繊細な歯車の模様が浮かび上がり、裾には私がかつて開発した極細の光ファイバーが織り込まれ、私の心拍数に合わせて淡く、優しく発光している。
「カンナっち、動かないで! 口紅が少しズレたじゃない。……もう、世界一可愛い花嫁さんなんだから、自信持ってよ」
七海が泣きそうな笑顔でブラシを動かす。傍らでは、正装に身を包んだ雷太が「今日は絶対に爆発させないからな!」と鼻をすすり、シオンが「……教会のセキュリティ、僕が完璧に掌握した。世界中のハッカーが束になっても、君たちの誓いを邪魔させはしない」と、眼鏡を光らせながらノートPCを叩いている。
みんな、変わっていない。
あの放課後の工芸準備室で始まった私たちの物語が、今日、一つの大きな完成(コンプリート)を迎えようとしていた。
「……失礼するよ」
控え室の重厚な扉が開いた。そこに立っていたのは、純白のタキシードを纏った湊くんだった。
ミルクティー色の髪をきっちりと整え、いつも以上に凛々しく、そして……狂おしいほどの情熱をその瞳に湛えて。
「あ……湊くん。あの、あんまり見ないで。恥ずかしい……」
私が俯くと、湊くんは迷うことなく歩み寄り、私の手を取った。手袋越しでも伝わってくる、彼の指先の熱。
「……無理だよ、カンナ。君から目を逸らすなんて、僕の全システムが拒否している。……綺麗だ。あまりに綺麗すぎて、このまま教会の扉を溶接して、誰にも見せずに僕だけのものにしてしまいたい……」
「……もう。湊くん、相変わらず愛が重すぎるよ」
「……分かっているだろ? 僕にとって君は、一生かけても解析しきれない、最高の『バグ』なんだから」
湊くんが私の額に、誓いのような熱いキスを落とした。
指先に嵌められた『ギアの指輪』。あの日、屋上で交わした約束の指輪が、今日は本物の結婚指輪として、二人の未来を繋ぐ唯一の回路(ゲート)になろうとしていた。
2. 世界が祝福する「最終バグ」
セント・ギアス大聖堂。
世界中に生中継される中、私たちはバージンロードを歩いていた。
沿道を埋め尽くす人々、そして画面の向こう側にいる数億人の人々が、私たちの開発した『ハート・リンク』を通じて、温かな「祝福の感情」を届けてくれている。
けれど、その時だった。
(……っ! なに、これ……。頭が、熱い……!)
突然、私の脳内に、津波のような膨大なデータが流れ込んできた。
世界中の人々が送ってくれる「おめでとう」「お幸せに」という膨大な感情のエネルギー。
かつてのプロジェクトZが私の脳に残した『感情演算回路』が、あまりにも巨大すぎる「幸せ」の負荷に耐えきれず、暴走(オーバーロード)を始めたのだ。
「……あ……っ」
私の膝から崩れ落ちそうになるのを、湊くんが咄嗟に抱きとめた。
「カンナ!? どうしたんだ!」
「……湊、くん。……ダメ。世界中の『祝福』が……私の脳に直結(アクセス)してる。……このままだと、私の意識が……焼き切れちゃう……!」
視界が白く塗りつぶされていく。
幸せすぎて、壊れてしまう。
神様は、最後の最後まで私に「普通の幸せ」を許してくれないのか。
『――カンナ、湊! 聞こえるか!』
インカムからシオンの叫び声が響く。
『「ハート・リンク」を通じて、世界中の善意が逆流している! カンナの脳の演算処理が限界(クリティカル)だ。あと三十秒で、彼女の記憶回路が強制シャットダウンされるぞ!』
「……そんなこと、させるか!」
湊くんの叫びが、聖堂全体に響き渡った。
彼は迷うことなく、自分の左手を私の左手に重ね、指輪同士を強く接触させた。
「湊くん、ダメ! あなたの脳まで、道連れになっちゃう!」
「……構わない! 君を失うくらいなら、僕の全記憶を消去したって構わない! ……カンナ、僕を信じて。僕の『独占欲(システム)』を、君に解放する!」
湊くんが、指輪に隠されていた最終プロトコルを起動させた。
それは、第10話で両親が遺した「共有」のさらに先を行く、湊くん自身が数年かけて開発した『絶対同期(フル・シンクロ)』。
「――僕の愛で、君の苦しみを、全部上書き(オーバーライド)してやる!!」
3. 深淵の同期:愛という名の過電流
視界が真っ白な世界に、湊くんの意識が流れ込んできた。
それは、言葉なんて必要ない、純度百パーセントの「湊くんそのもの」。
(……熱い。湊くん、あなたの心、こんなに熱かったの……?)
意識の深淵で、私は見た。
彼がこれまでの人生で、どれほど私を守るために自分を削ってきたか。
世界中が私を「女神」と崇める中で、彼だけが、油まみれで泣いていた「ただの私」を愛し続けようと、どれほど必死に孤独と戦ってきたか。
『カンナ……。君がいない世界なんて、僕には一行のコードも書けない。……僕の心臓は、君の笑顔をメンテナンスするために動いているんだ』
彼の執着、嫉妬、独占欲、そして何よりも深い……狂おしいほどの慈愛。
そのすべてが私の脳内にインストールされ、暴走していた感情の波を、一つ、また一つと「幸せ」という名の正しいフォルダへ整理していく。
(……ああ。私、一人じゃない。湊くんが、私の命を半分背負ってくれてる)
私たちの意識は、周波数を超えて完全に一つに溶け合った。
五ミリの隙間も、一ミクロンの隔たりもない。
二人の魂が、一つの回路として完璧に噛み合った瞬間。
パリン!
脳内で、何かが壊れる音がした。
それは、私を苦しめてきたプロジェクトZの「呪い」が、あまりにも強大な二人の愛の電力に耐えきれず、ついに完全消滅した音だった。
「……っ……、はぁ、はぁ……」
意識が戻った時、私は湊くんの腕の中で、彼を見上げていた。
聖堂は静まり返り、世界中が、抱き合う私たちの姿を固唾を呑んで見守っていた。
「……湊くん。……私、生きてる」
「……ああ。……デバッグ、完了だ。僕の、世界一わがままなシンデレラ」
湊くんが、震える手で私の頬を包み込んだ。彼の目には、見たこともないほどの涙が溜まっていた。
「……もう、どこにも行かせない。神様にだって、君の一秒も譲らないから」
湊くんが、全校生徒(と世界中の視聴者)の前で、ひざまずいて誓った。
「如月カンナ。……君の人生の全バグ、全エラー、そして全幸せを、僕が一生をかけてメンテナンスすることを誓う。……僕と、真の『生涯契約』を結んでくれるかい?」
私は、涙を流しながら、最高の笑顔で頷いた。
「……当たり前でしょ。……私の心にアクセスできるのは、あの日からずっと……湊くん、あなた一人だけなんだから!」
世界中が、これまでで最高の歓喜に包まれた。
空飛ぶドローンが祝福の花吹雪を散らし、雷太が(今回だけは許可を得て)虹色の煙火を打ち上げる。
七海が「最高に綺麗だよ!」と号泣し、シオンが満足げに「……全システム、ハッピーエンドを確認」と呟いた。
4. 永久のプログラム、起動
数年後。
海が見える静かな丘の上に、小さな研究所兼自宅を建てた。
私は今も、人々を笑顔にするための新しいガジェットを作り続けている。
天才の力はもうないけれど、私の隣には、最高のプロデューサーがいてくれる。
「……ママ! パパがまた、私の『空飛ぶおもちゃ』に勝手にパスワードかけて、自分しか触れないようにしたよ!」
五歳になる娘のカノンが、唇を尖らせて走ってきた。
彼女の手にあるのは、私が作った小さなドローン。
「あはは……。湊くん、娘にまで独占欲出さなくていいのに」
「……ダメだよ。カノンの才能が世界に見つかったら、また悪い奴らが寄ってくる。……カンナ、君とカノンを守るのが、僕のメインタスクなんだから」
スーツ姿で仕事から帰ってきた湊くんが、カノンを抱き上げ、そして……私を後ろから抱きしめた。
「……ただいま、カンナ。……今日も、僕のこと、一番に考えてくれた?」
「……おかえり、湊くん。……仕事中も、三十分おきにあなたのこと、脳内検索(サーチ)してたわよ」
「……ふふ、合格だ」
湊くんが私の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込む。
十年経っても、彼の愛は重く、甘く、そして救いようがないほど真っ直ぐだ。
窓の外では、私たちがかつて守り抜いた学園の卒業生たちが、新しい未来へと羽ばたいている。
バグがあって、エラーがあって、思い通りにいかない世界。
けれど、私たちは知っている。
不完全だからこそ、誰かと手を取り合い、最高の回路を築けるのだと。
私は左手の指輪を見つめ、そっと微笑んだ。
私たちの物語に、終わり(エンドロール)はない。
毎日が、新しいアップデート。
毎日が、新しい「好き」の積み重ね。
「……さあ、湊くん。今日の夕食の献立、一緒に『プログラミング』しましょうか?」
「……ああ。……デザートは、君がいいな」
「……もうっ、パパのバカ!」
笑い合う家族の声が、初夏の風に乗って、青い海へと溶けていく。
恋の回路は、永遠に焼き切れることなく、最高出力で輝き続けていた。
『爆走!メカニカル・シンデレラ』
――ハッピーエンド、永久保存完了。


