丘の上の小さな 美容室
夜の事情と惚れた弱み
結婚式に興味はなかった。
友だちや親戚の結婚式を見て、花嫁は幸せそうで綺麗だったけれど、いざ自分がしたいかと問われれば答えはノーだ。
事前準備や費用を考えるとそれなりになるし、その労力と費用は仕事と恋人に充てたいと思ってしまう。
市役所で婚姻届を出したその帰り道、あたしが仕事に向かう間際に美織が街中のショーケースに飾られていたウェディングドレスの前で立ち止まったのを見て、式をしたいのかどうか聞いてみた。
「深青のドレス姿が見たいです」
躊躇いなく言われて、でも式をしたくないと伝えると、美織は「じゃあ、写真だけでも」と言われて頷いた。
式は挙げずとも、ウェディングドレスは着てみたい。
「美織は、式、興味ある?」
「あまり派手なことは苦手です。深青がいいなら、式はしなくていいです。その代わり、少しいいところで食事でもしませんか?」
写真を撮ったあとに少しいいところで食事。
とても、良い。
あたしが頷くと、じゃあ、この話はまたあとでですね、とそれぞれの仕事場へと向かった。
後日話し合い、写真撮影と料亭の予約を取り、あたしは写真撮影のためにエステに通うことにした。
少しでも綺麗に写りたくて、奮発して良いコースを契約した。美織に褒められたくて柄にもないことをした。
結果、喧嘩した。
エステの明細書を発見し、見られてしまったのだ。