冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「つまり、湊さんにとってもあなたにとっても、この結婚は『取引』だったの。取引なら、契約期間が終われば終了。それだけのことよ」
「そんな……」
「それとも、契約を解除するって話が出ているの?」
華恋さんの問いかけに、私は答えられない。
最近、湊とそんな話はしていない。
私のことを、大切に思ってくれる。毎日、優しくしてくれる。
だけど――契約のことは、一度も話題に上がっていない。
「やっぱり」
華恋さんが、勝ち誇ったように微笑む。
「湊さん、何もおっしゃってないのね。それが答えよ」
私は、唇を噛みしめる。
言われてみれば、湊は一度も『愛している』という決定的な言葉を口にしていない。
「考えてみて? 湊さんは優秀な経営者よ。半年経てば目的は達成される。そうしたら、もうあなたは必要ない」
華恋さんが、ナイフとフォークを置く。
「湊さんはきっと、契約期間が終わったら、もっと相応しい女性と再婚するわ。財閥の令嬢とか、ビジネスに役立つ相手とね」
涙が溢れそうになるのを、必死に堪える。
「私、あなたのことが心配で」
華恋さんが、同情するような表情を浮かべる。しかし、その目には冷たい光がある。
「半年後、捨てられて傷つく前に、紗良さんから離れた方がいいんじゃない? どうか、ご自分を大切に」
そう言って、華恋さんは流麗な手つきで食事を続ける。
私は、フォークを持つ手がこわばって、もう何も喉を通らなかった。